Case5 美人故に結婚が難しくなった29歳
第22話
昔から、私、木内麗華はそれなりにもてた。
学生時代は、すぐに結婚しちゃうね、なんて友人から言われるほどで、自分でもそう思っていた。
だけれど、私に近寄ってくる男は、私の外見目当てが多かった。
だから付き合った男達は色々な場所に連れて行った。
そう、私を見せびらかすために。
若くて美しい、は本当に武器だった。
私は相手を選ぶことが出来た。
会社社長やら政治家とも交際したことがある。
でも、みんな長くは続かなかった。
それでもすぐに次が来るのだから気にすることも無かった。
その間、友人達がどんどん結婚していく。
まだ20代も前半なのに、なぜそんなに自分から自由のない檻に入りたがるのか、いまいち理解出来ず傍観していた。
そしてそろそろ30歳も近くなった時、状況は一変した。
あれだけ頻繁に声をかけてきた男達が、一人、また一人と消えていった。
最初はまぁそんなこともあると思っていた。
深く考える必要など無いと思っていたのだ。
「そりゃ、男は美人より若い女が良いに決まってるじゃない」
未だ独身同士という事で一番気が合う友人と食事をしていたらそう言われた。
「あのね、私達何歳だと思ってるの?
20歳前後の娘に勝てるわけないじゃない。
凄く美人の30歳より、ほどほどの20代の前半を男は妻に選ぶのよ」
私はぽかんとして言葉もない。
「男とそれなりに付き合ってるのに、なんでそういうところに頭が回らなかったかな。
美人でいつ浮気されるか心配で過ごすより、安心出来るくらいのレベルのほどのどな女を男は選ぶの」
「そんな頭悪いって言わないでよ」
「だって辺に男慣れしてないんだもの。
まともに恋愛したことあるの?」
「まともな恋愛の定義について是非ご教授を」
「私に仕返ししたい気持ちはわかった。
ようは男が彼女にしたい女と結婚したい相手は違うって事」
「で、私は彼女にしたい女で止まる訳ね」
そう言った私に、友人は少し意外そうな顔をした。
私はため息をつきつつ答える。
「私だって自覚してるわよ」
「そっか。
それが悪いとは思ってないけど、わざとそうしてるのかと思った」
友人の言葉に私は苦笑いして言葉を続ける。
「昔から相手の方から寄ってくるから、それで良いのかなって思ってたんだよね」
「多くの女性を今、敵に回したからね」
「いや、だってそうだったし」
そういうとギロリと睨まれ、思わず顔を背けた。
「私も婚活中で偉いことは言えないけどさ、こっちは普通のルックスだから、仕事が忙しくて出会い所じゃなかったと言えば、東京ならこの歳でも全然平気なのよ。
でもさ、麗華は美人でどうみても男がほっとかないことくらい誰だって分かる訳よ。
それが未だ独身って事は、理想高いんじゃないかと思って新しい男は手を出しにくいんだと思う」
「別に理想高くなんて無いわよ」
「でも今まで社長だのなんだのと付き合って散々贅沢味わっておいて、急に庶民と付き合えるの?」
「なんか勘違いしてるけど普通の人とも付き合ったことあるよ?」
「どんな人?」
「大学生とか」
「それって大学生の時に大学生と付き合ってたってことよね?
まさかその歳でめっちゃ年下の大学生と付き合っていたというのじゃないわよね?」
「そりゃそうよ、大学時代の話」
「それは含めるな」
真顔になった友人に厳しい声で言われ、私は不満そうな顔を浮かべてしまう。
「とりあえず、麗華も本腰入れて婚活したほうが良いって」
「例えば何したらいい?」
そうねぇ、と友人は少し宙を見て考えている。
「お金があればきちんとした結婚相談所登録するのがいいんじゃない?」
「そっちは何をしてるの?」
「ネットの婚活サイトにいくつか登録してる」
「どんな感じ?」
「少なくとも私はイマイチ。
食事くらいはするけど、ほとんどそれで終わるかな」
「なんだそりゃ」
「言っておくけど、私の基準が厳しすぎるんじゃないのよ。
こういう場所で結婚までいった人もそれなりにいるけど、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるよな戦法を取る所よ、ここは。
素敵な人に出会える人達も居るけどそれはイレギュラーだわ。
でもやらないよりマシなのよ」
そういうと友人は盛大にため息をついた。
イレギュラーな婚活サイトに登録する意味ってなんなのだろうと友人を見て思う。
「わかった。
とりあえず、ネットの婚活サイトでも登録してみるかな」
結婚相談所はハードルが高そうだけれど、ネットなら気軽な気がする。
そう言った私に、友人はいくつか自分の登録しているサイトを教えてくれた。
「麗華は写真だけで選ばれる可能性高いから、それなりにメール来るだろうし覚悟しておきなさいよ」
友人は最後、真面目な顔で私にそう忠告した。
面倒になるといけないので、まだやる気のあるうちに私は教えてもらった一つに登録してみた。
はっきりいって、登録する時に色々書かないといけないことの方が面倒で心が折れそうになる。
「長男でもいいか、親と同居でもいいかってそこまで書くのか、うわぁ」
私は記載項目の細かさにうんざりとしていた。
別に長男でもいいけれど、向こうの親と同居なんてごめんだ。
身長とかこちらは書かないといけないけど、私の身長は約168センチ。
ヒールなんて履いたら、男性の平均身長を軽く抜くのだ。
出来ればぺたんこな靴を履くことを要求しない男性が良い。
私は初めて、結婚するならどういう男性が良いのか、自分で細かく考えないといけないという事にぶちあたった。
今までそんなこと考えたことが無かったので、本当に苦労した。
段々疲れてきてある程度で記入を済ませて、次は写真だ。
友人に、バリバリ決めてる写真じゃなくてそれこそ集合写真の一部を切り取るとか、真正面は向いてない方が良いだのと言われ、色々スマートフォンの画像を漁るけど、思ったより自分の写った写真が無い事に驚いた。
自分の写真を探せば1年以上前のしかなかった。
しかたなく、その友人達と写った写真を自分の部分だけトリミングし貼り付けた。
本当にこんなの毎回書いているなんてうんざりだ。
私はそこで登録完了を押し、パソコンを閉じた。
「なに・・・・・これ」
翌日朝、登録したサイトのメール受信箱を見ると、恐ろしいほどの数が入っていた。
スクロールしてもまだ終わらない。
「午前四時に送ってる人はなんなの」
私は逆に怖くなってとりあえず仕事に行くことにした。
「増えてる・・・・・・」
帰宅して再度見てみたらもっとメールはもっと増えていた。
この量をいちいち読んで、プロフィールまで見ないといけないなんて。
既に仕事で疲れているのに。
私はとりあえず、一番送ってきたのが早い人から読んでみることにした。
とりあえず、メールの文章があまりに定型文すぎる、偉そうな雰囲気を出しているものは除外。
そしてプロフィールを確認する。
写真を見て、不自然なものが結構ある。
わざと腕を写るようにしてあるものまであった。
ようは、ブランド物の時計などをアピールしたいのだろう。
「ある程度稼ぐと今度はそういうものに興味無くなるんだよね、男性って」
今まで交際したり付き合いのあった社長や稼いでいる人は、突き抜けてしまうと、思ったより物に固執せず、結構平気でファストファッションとか着てしまうのを知っていた。
「ふむ、除外、これも除外っと」
そういう事をしながら、なんだか自分がおそろしいモノに思えてきた。
現実では昔のように声が掛かることもちやほやされることも減ったというのに、このネットの世界ではまた昔のようなことが起きた。
きっとこれは最初だけ。
なんだかむなしくなってきた。
でもせっかく登録してここまで動くことにしたのだ。
私はとりあえず三人の男性に会ってみることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます