天候聖女は別国で幸せになります~天気しか操れない無能といった国は革命が起きました~

ことはゆう(元藤咲一弥)

天候聖女は別国で幸せになります~天気しか操れない無能といった国は革命が起きました~




「クローディア・ウェザー。お前の聖女としての権利剥奪、そして追放を言い渡す」

 久しぶりに呼び出されたと思ったら、この扱い。

 いいでしょう、それならこちらにも考えがあります。





「聖女様、今年も天気の方を宜しくお願い致します……」

 農民達はこぞって私の前に現れ、頭を下げていく。

「分かりました、今年も農作物が豊作であるように、私も務めます」

 と、いつものように私は返します。


 今年もいつものように、グラン王国の農作物が豊作であるように、天気を操らなければと考えていると──


「く、クローディア様。新国王のデール陛下からお呼び出しが」


 付き人が慌てている様子に、私は違和感を感じながらもデール陛下の呼び出しに応じました。



「クローディア・ウェザー。お前の聖女としての権利剥奪、そして追放を言い渡す」

 久しぶりに呼び出されたと思ったら、この扱い。

 いいでしょう、それならこちらにも考えがあります。

「分かりました、ではこの国を出て行きます」

 私は聖女の証を付き人に渡し、一人姿を隠して国を出て行きました。





 グラン王国から少し離れた所にある、オーブ帝国まで辿りつきました。

 さて、何をしようかなと思っていたら、農民達が困り果てていました。

「如何しました?」

「今年は雪が降らなくて水が足りないのに雨が降らないんだよ」

「雨、ですか。降らせましょうか」

「へ?」

 私はフードを脱ぎ、祈りを捧げます。

「恵みの雨よ、ここに」

 ぽつぽつと雨が降り始め、やがてザーザーと音を立てて本降りになりました。

「あ、雨だ!」

「本当だ! 雨だ、雨だよ‼」

「お、お嬢ちゃんが降らせてくれたのかい⁈」

「まぁ、そういう力がありますので、私天気操れます」

「本当かい⁈」

「良かったら村に滞在しておくれ‼」

「ではお言葉に甘えて……」

 私はその村に滞在することにしました。


 村の天気を操り、作物を成長させていくとその評判が他の村へ届き、他の村からも天気を操ってくれとお願いされるようになりました。


 私の新しい聖女ではない生活を満喫していましたが、それはあっけなく終わりを迎えました。


「天候の聖女クローディア・ウェザー。やはり貴女だったのか」


 この国の第二皇子、クラレンス・オーブ。

 まさか、直々に城下でもない農村地帯に来るとは予想外です。

 しかも護衛もつけず。


 何考えてるんですかこの人。


「クラレンス殿下、何の用があって来たのでしょうか?」

「勿論、貴女をこの国の聖女として認定する為です」


 はい?


「ですが、私天気しか操れませんよ?」

「それで十分、現に今農村で天気を操って民達を救っている」

「はぁ……」

「それに聖女認定されれば、移動も楽になりますよ?」

「します」


 何かのせられた気もしますが、クラレンス殿下の言う通り、城下町へ向かい神殿で聖女認定を受けて、移動手段を得ることができました。


 ですが、私の居る場所は基本農村、そこで天気を操り、雨を降らせたり、晴れにしたりと忙しい日々が続きました。



「クローディア」

「あの、毎日来られても困るのですが」


 クラレンス殿下はあの日以来毎日私に顔を見せに来ます。


「いや、今日は君に面白い話を持ってきてね」

「はい?」

「君の祖国、グラン王国なんだけど……日照りが酷くて干ばつになって農民が荒れてるそうだよ、聖女様は何処だ、と」

 その言葉に、胸がちくりと痛くなりました。

「……」

「他の神官や聖女がどうにかしようとしてるみたいだけど、君みたく天気は操れないらしくてね、雨が降らない。だから農民達は今蜂起してるらしいよ各地で」

「そんな事が……」

「他の国から食べ物を輸入してるらしいけど、足下見られて高値でふっかけられてるそうだし、兵士達も不満が爆発寸前!」

「何でそこまで調べているのですか?」

「当然さ、君を無能扱いした国がどうなるか知りたいじゃないか!」

「まぁ、無能扱いはされましたが……」

 民が苦しむのを見るのだけは嫌だった。


 かといって戻るのもどうかと思うし……と私は悩む。


「大丈夫、もうすぐ終わるから」

「はい?」



 それから半年も経たないうちに、城下を訪れると噂話で持ちきりだった。


 なんでもグラン王国は民と兵士が暴動を起こし、国王をその座から引きずり下ろしたとか。

 つまり革命が起きてしまったと。


 跡継ぎについたのは、幽閉されていた第一王子クリストファーだった。

 言われ無き罪で幽閉されていたのだという。


 クリストファー陛下は、私が居るというオーブ帝国に頭を下げて、どうか聖女クローディア・ウェザーを返して欲しい、それが無理ならこちらでも彼女の祈りを届かせて欲しい、と依頼。

 帝国側は、返すのは無理だけど、貸すのは良い、祈りを届かせるのはいい、と許可。


 私はものじゃないんだけどな。


 そうして、私は何故かクラレンス殿下と共に祖国を訪ね、雨を降らせて作物の成長を再び良き物にしました。





 聖女の方々も一部牢屋にぶち込まれていて、ちょっとすっきりしました。

 久々にあった付き人は私の姿を見て、歓喜の涙を流していました。

 私も彼女が元気で嬉しかったので、ちょっと泣きました。





「で、クローディア」

「クラレンス殿下、何でしょう」

「良かったらこのまま私と結婚してくれないかい?」

「うーん結婚ですか」

「勿論すぐじゃなくていいとも」


 クラレンス殿下はそうおっしゃいました。



 クラレンス殿下は毎日私の顔を見に来て、話をするということを繰り返しました。

 そう言った交流をしていくうちに、クラレンス殿下に私は淡い思いを抱くようになりました。




 結果三年後、私はクラレンス殿下と結婚します。

 結婚してもやることは変わらず、私は民の為に天気を操る為の祈りを捧げます。





 私を無能扱いしたデール陛下は獄中死したそうですが、もう私には関係ないことです。






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