第49話 双子の試練



 一花いちか以外の3人は、まだ意識がもうろうとしているようだ。


 右手は一花の肩から放せないから、左手をホットパンツにかける。


 ボタンを外してチャックを下げたが、ホットパンツは落ちない。


 雄二がフラフラと立ち上がり、「何やってんだ!」と叫んだ。


 その声を聞いた妹夫婦が、気が付いたようだ。


「一花から離れろ!」


 雄二が叫びながら拳を振り上げて殴りかかってきたから、みぞおちに一発入れた。


「ぅっ」


 雄二は唸りながら、その場に崩れる。


「兄さんヤメテ!」


 葵の目を見つめながら、「黙って見ていろ」と言い聞かせる。


 一花のホットパンツに手をかけて下へ落とすと、ベージュのパンツが現れた。


 なんつー色気のない下着を履いてるんだ。


 こいつは本当に男子に興味がないのかもしれないな。


蒼大そうた。やめてくれ。一花に酷いことをしないでくれ」


 俺の足元で雄二が懇願しているが、ダメだ。


 それは聞けない。


 すまないが、もう暫くそこで寝ていてくれ。


 返事ができない一花の瞳を見つめながら問いかける。


「パンツも脱がしていいか?」


 すると、一花の両目から涙が零れ落ちた。


 いい反応だ。もう少し頑張れよ。


 俺は一花の涙を無視して、パンツを脱がして全裸に剥く。


「裸にされた気分はどうだ?

 どうして黙ってるんだ?

 それなら、これはどうだ」


 俺は時間をかけてゆっくりと、一花にも見えるように胸へ向けて左手を動かす。


 すると、足元の雄二が俺の足を掴んで、


「頼むからやめてくれ。

 僕が何でもするから、一花に酷いことしないでくれよ!」


 やはりお前はそういうんだな……。


「なぁ一花。雄二が何でもしてくれるそうだけど、どう思う?」


 胸へ向けていた手を上げて、頬をペチペチと叩いていたら、瞳から洪水のように涙が吹き出してきた。



 全員を見回して、説明をはじめる。


「さっきお前らが身動きできなくなったのは、俺が殺気を飛ばしたからだ。

 魔獣との戦いってのは、ああいうことなんだ」


 あれで気を失ったヤツは、シーカー失格だと言い放つ。


 一花が動けなくなっているのは、俺が魔法を使っているからだとネタばらしをした。


 俺は水系統魔法が得意だ。


 肌に触れてさえいれば、相手の体内の水分をコントロールして、一瞬で行動を縛ることが可能だ。


 これは回復魔法の応用で、脳と全身の神経の接続に不具合を発生させている。


 何を言っているのかわからないだろうが、脳からの信号が届かなければ、全身麻痺のような状態異常に仕向けることができるのだ。


 国連で俺がやられてた、全身麻痺装置のようなものだな。


 魔獣の中には、遠くからでも似たような攻撃をしてくるヤツが居ることを教える。


 冷静さを失った雄二の行動は、早死に繋がる行為だと注意した。


 服を脱がされたくらいで泣いてしまうのは、気持ちの準備ができていない、甘えた女子の精神だと言い聞かせる。


 学校の模擬戦で少し戦えるとしても、そんなものは魔獣には通用しないことを、二人に教えた。


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