第48話 本当に言いたいこと



「異世界は俺たちの常識では測れない場所なんだ」


 お前たちがシーカーとして行く異世界は、常識外れのとんでもない場所だ。


 魔獣との戦闘ってのは、常識を捨てないと生き残れないんだぞと伝えたかった。


 だと言うのに、ただただ俺のダメさを披露しただけになった気がして、落ち込んだ。



「学生のうちに飽きるくらい経験しておけば、ダンジョンでミスを減らせるんじゃないか?

 だから一花いちかも、そうクラスメイトを嫌ってやるなよ」


「おサルさんに言われたくありませ~ん」


 姪に罵倒されるのは、とても悲しい。


 自業自得だから仕方ないが……。


「まぁ、あれだ。

 恋愛とかの、気持ちや心を通わせることと、エッチすることは切り離して考えるべきだ」


 葵が「ハァ」と、大きくため息をつき、


「兄さんが異世界でダメ人間になっちゃった……。どうしたらイイ?」


「もう手遅れじゃん? ダメっしょ」



「バカ話しは、これで終わりにして、本題に入ろう。

 途中から、俺も自分で何の話しをしているのか、訳がわからなくなってた」


 家族からの視線が痛い。


「昨日、葵たちと話しをしたんだが、お前たちの本心を聞かせてくれないか?」


「ん? 本心って?」


「どれだけ本気でシーカーになるつもりなんだ?」


「どれだけもなにも、全部本気だけど?」


「雄二はどうなんだ?

 シーカーになって、生き残る自信はあるのか?」


「死にたくないからね。頑張って生き残るよ」


「一花は?」


「アタシってば、模擬戦でも強いからさ~。簡単にはやられないよー?」


「そうか」


 俺は椅子から立ち上がり、テーブル脇のスペースへ移動した。


「一花。ちょっと来てくれ」


 と手招きして呼ぶ。


「どうしたん?」


 一花が目の前に来たタイミングで、本気の殺気を放つ。


――――パキッ。


 リビング全体が凍りついたかのように静止した。


 一花が崩れ落ちそうになったのを見て、右手を伸ばして肩を掴み、転ばないようにした。


 ガクガクと全身を震わせているが、意識はあるようだ。


 蒼介さんは白目を剥いて気絶している。


 葵は胸を押さえながらテーブルに倒れた。


 雄二は椅子に座ったまま硬直している。


 全員が何かを感じた瞬間、身動きできなくなったようだった。



 一花の肩を持つ右腕に魔力を送る。


 一花の震えはピタリと止まり、全身の力が抜けたかのようにグッタリした。


 そんな一花の頬をペシペシと叩き、無理やり意識を俺へと向ける。


「なぁ一花。裸を見られるくらいは平気なんだよな?」


 一花の目を睨みながら問いかけた。


 空いている左手で、タンクトップの胸元を掴んで一気に下へ引っ張る。


 薄い布切れは千切れて破れ、ノーブラだった一花の胸が剥き出しになった。


 ビクリと肩が一瞬震えたが、声を上げることも、俺の手を払い除けることも、いまの一花にはできない。


「本当に平気なのか?

 俺にオッパイ見られて何も感じないのか?」


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