第40話 早いもので



 師匠が走って逃げ出す12月になった。


 定期検診を受けるため、国連日本支部へ向かう。


 10月初旬にはランク6になったけど、

その後はなかなかランクアップができなくて、ソロ活動の限界を感じている。


 月末までに就職先を決めろと言われているのだが、実はまだ迷ってるんだよなぁ……。


 何度かパーティーの誘いを受けたことはあったが、この先どうするか決めてないから、丁重にお断りをしていた。


 結果、ソロで挑み続けて限界を感じているんだから世話がない……。



 ここで定期検診を受けるのは、これで最後になるだろうと思っていたのだが、どこに就職しようとも、


『今後は三ヶ月ごとに検診を受けに来るように』


 と言われてしまった。


 異世界帰りのモルモットは、おとなしく従うしかない。


 検診を無料で受けられるのは、オイシイことだと思うことにする。



 午後の島松先生の診察では、

健康的な肉体を保っていること、

生活に支障なくシーカーとして精力的に活動していること、

などから精神面の不調も見られず、

心身ともに健康だと太鼓判を押してもらった。


「ところで、ランク10になったそうね」


「はい。時間はかかりましたが、やっとです」


「日本人のシーカーとしては、早すぎるペースよ?」


「月末までにと思って、急ぎました」


「そもそも、ランク10になれる人は少ないの」


 そうなのか?


 時間さえかければ、誰でもなれる気がするんだが違うようだ。


「足守さんは異世界での経験があるから、

 多少は早いと思っていましたが、ここまでとは驚きです」


「なるほど。どうも周りの目が気になると思ったら、そういうことだったのか……」


 魔石の換金をしていると、検査官たちのヒソヒソ声が聞こえてくることがある。


 国連職員で俺の素性を知っているから、噂話しのネタになってたのかよ!



 検診の予定をすべて消化すると、お待ちかねの資料室タイム。


 最近は魔石の換金だけでも充分に稼いでいるから、魔力研究所の有料会員になって情報収集している。


 しかし、国連には他では見ることのできない情報があるから、国内最高ランクの魔力渦について調べたい。


 岩沼さんに付き添ってもらい、資料室の端末を起動する。


 ランク10の魔力渦は国内に三箇所ある。


 知ってはいたが、どこの魔力渦も魔獣の攻撃が厄介そうだ。


 魔法を絡めて攻撃パターンが多く、しかも集団行動しているのか……。


 ソロではキツイかな?


 アイテムを買い込んで、試しにどれかに行ってみるか?


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