第36話 国連の資料室



 10月になったから、定期検診のため国連日本支部へやってきた。


 検査と診察を終え、食堂で昼食を食べていたら岩沼さんがやって来て、


「ご一緒してもいいですか?」


「どうぞ」


 席を勧めると、岩沼さんはお弁当を広げた。


「それは自分で作ってるのか?」


「昨日の残り物です」


「それでも、たいしたもんだ」


「ランクアップは順調のようですね」


 岩沼さんは、お弁当の里芋をコロコロしながら聞いてきた。


「ランク5になって、ようやく歯ごたえが出てきた感じがする」


「今後は魔獣も強くなっていきます。午後の診察のあと、時間があれば資料室に行ってみますか?」


「いいのか! 前はダメだと言われたが」


「ランク5なら問題ありません。コピーや持ち帰りはできませんが閲覧はできます」


「頼むよ。情報が欲しい」


「わかりました。それでは、診察が終わったら案内します」


 やったぜ!


 一般には公開されていない、ダンジョンや魔獣の情報を見ることができる。


 入院していた時は、「ダメです」と固く断られたが、ランクの問題だったのか?


 岩沼さんと他愛もない話しをしながら昼食を終え、午後の診察を受けるため島松先生を訪ねる。



 早めに終わったのは、2回目だからだろうか?


 岩沼さんの案内で資料室へやってきた。


「この端末で閲覧できます。ライセンスカードをココに置くと使えます」


「ありがとう。では早速」


 ライセンスカードを取り出して、端末の横に置くと起動した。


「それでは、私は仕事がありますから行きます。

 今からだと2時間くらい使えますが、帰る時には知らせてください」


「了解した」



 外部の俺が閲覧できる情報は少ないだろうが、一番気になっている国内最高ランクの情報を探してみる。


 海外にはもっと高ランクがあるけど、ランク10が国内では一番難易度が高い。


 ダンジョンのマップや特徴、出現する魔獣の写真などなど。


 一般には非公開の情報が山盛り記録されている。



 魔獣の写真は普通に公開されているし、マップは有料で購入できる。


 異世界情報を売買できるサイトで、魔獣の詳しい情報を買うこともできる。


 魔力研究所でも有料で情報を公開している。


 それでも国連が魔獣の情報を公開しないのは、間違った情報を出してしまうと、責任問題になるからだろう。


 魔力研究所は国連と密接な関係にある。


 魔力研究所が出す情報は独自に調査したもので、国連だけが持っている情報は出さないようだな。


 端末で国連の情報を見て、それを確信した。



 メモを取ることもできないが、時間が許す限り情報を漁っていたら、岩沼さんがやってきて、


「そろそろ時間です」


 と告げられ、帰宅することにした。



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