第33話 ランク1の異世界



 シーカーとしてデビューする日が来た。


 この日のために買い揃えた服へと着替える。


 これはシーカー用の異世界装備だ。


 汗を吸い不快感を軽減する肌着。


 簡易耐熱・耐冷機能付きのジャージのような服で、そこそこ値が張った。


 念のための回復ポーションと、パンとジュースを購入し、装備を身に着け検査所へ向かう。


「荷物をすべて出して見せてください」


 検査官の指示にしたがい、バックパックの中身を出して並べる。


 そこには、持ち帰るゴミを入れるゴミ袋もある。完璧のはずだ。


 チェックを終え魔力渦ゲートへ向かう。


 ここでライセンスカードを提出して、ゲートを開けてもらわないと入れない。


 ビーーッと大きな音が鳴り響き、ロック解除音が聞こえた。


「無事に戻ってこいよ。気をつけてな」


「了解した。ありがとう」


 ライセンスカードには、さまざまな情報が記録されている。


 さっきの検査所で許可が出たことも記録されていて、当日の荷物チェックを終えていないと、ゲートを通ることはできない。


 カードには金属チップが入っていて、異世界に持ち込みができない。


 だから、ゲートで預かってもらうことになっている。


 異世界で落としたりしないように、そんな意味もあるらしい。



 魔力渦を通過して異世界へ足を踏み入れると、最初に立ち寄る所がある。


 国連の見張所だ。


 ダンジョンなどから、魔獣が押し寄せて来ないかを監視している。


 ここで、氏名とライセンスナンバー、戻り時間の予定を記入する。


 これで、やっと異世界の探索へ出かけることができる仕組みになっている。



 この異世界の時間は3倍速だから、戻りは10時間後にしておいた。


 ここで10時間過ごしたとしても、元の世界に戻ると3時間程度しか経っていないことになる。


 戻りが遅いと捜索隊が派遣される。


 多額の派遣料が発生するから、シーカーは非常時を除いてきちんと戻るし、余裕を持った帰還時間を記入するそうだ。



 のんびり歩いてダンジョン入り口に到着。


 このランク1ダンジョンには、他にはない特別ルールがある。


『狩りすぎ禁止』だ。


 1人あたり魔獣5体までしか討伐できないし、ボスクラスの魔獣は討伐禁止になっている。


 入門用のダンジョンだから、魔獣が枯渇すると困るらしい。


 国内にはひとつしか存在しないランク1ダンジョンだから、他よりも管理が厳しくなっているそうだ。



 ダンジョンマップを見ながら、奥へと進む。


 マップは講習会でもらった物で、他のダンジョンのマップは有料で販売されている。


 国連は、あの手この手でお金を巻き上げるが、設備の維持には多額の予算が必要だろうから、仕方のないことだろう。


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