プロローグ
花福秋
第1話「出会い」
「今日遅くなるの?」
「うん。だから、先に寝てて?」
「うん、分かった。」
「遅刻するから行くね。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
私の名前は金田(かねだ)綾。
結婚して四年目。
夫の康太と二人で暮らしている。
何不自由のない生活を送れているのに何かが足りないことに気付こうとしない私。
刺激的な何かを欲しがっている私も居た。
「私もそろそろ出かけるかな」
この日は仕事で出会った友達の優子との打ち合わせだった。
私はフリーのライターをしていて優子は雑誌の編集長をしている。
「綾、こっち!」
待ち合わせの場所である喫茶店に着くと優子の隣に少し小柄な男性が座っていた。
優子の彼氏だろうか。
「ごめんね。待った?」
「ううん、さっき来たところ。ね?」
優子が隣の男性に問いかけると「はい」と頷いた。
「優子、そちらは?」
私は気になって男性の正体を聞いた。
「今回、綾と組んでくれるカメラマンの秋本消(しょう)くん」
「秋本です。よろしくお願いします。」
「へぇ、てっきり優子の彼氏かと思った。」
「そんなわけないでしょ?消くんはフリーだよ!ね?」
「生まれてから一度も好きな人が居たことなくて…」
「それに彼まだ未成年」
「え?…おいくつ、ですか?」
「18です。高卒で優子さんにスカウトされて」
「へぇ」
「奥手なのよ、消くん」
「そう、ですかね?」
秋本さん、恋人居ないんだ…。良かった…。
何故か私は心のどこかで安心をしていた。
「連絡先、交換したら?」
「「え?」」
私も秋本さんも変な声が揃ってしまった。
秋本さんをちらりと見ると視線が交わって少しだけ笑い合った。
「消くん、綾には手出しちゃダメだよ?綾には素敵な旦那さんが居るんだから」
「ちょっと!秋本さんが困ってるよ!」
「あ、いえ。困ってませんよ。素敵な方だと思います」
自分の鼓動が高鳴っているのが分かる。
「こ、こんなおばさんでも…?」
「年なんて関係ないと思います。恋愛って相性かなって」
「消くん、恋愛経験ないじゃん」
「あ、そうでした。」
「もうしっかりしてよね。2人とも。」
この日は顔合わせをして連絡先交換と軽い打合せで終わった。
秋本さんにもまた会いたいと思った。
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