(二)-14

「君にしては珍しい失敗だな、巨勢」

 失敗? なんのことだろうか。確かに巨勢は最近、集中をやや欠いていた。しかし完璧に仕事をこなしてきた。そういう自負があった。だから部長の言葉に少し意表を突かれた。

「例の物部製作所の件、契約書類に間違いがあったそうだ。肝心の契約金額が一桁少ないと、ご丁寧に先方から連絡があったぞ。良かったな、そのままサインされなくて。修正したものをすぐに持っていき、謝罪してこい」

 契約金額が一桁少ない? 頭を打たれたような衝撃を受けた。まさかそんなミスをするとは…… 。巨勢はしばらく自分がミスしたことが信じられなかった。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る