(二)-8

「驚かないで。あなたに認知してもらいたいとか、生活費が欲しいとか、そういったことは全然考えていないから」

 手を動かしながら彩夏はそう巨勢に告げた。

「この子は私が育てていくから安心して。今日はそれを伝えたくて。それだけだから」

 彩夏はそう続けた。

 確かにその言葉が本当ならば、安心できるかもしれない。しかし、実際にDNA鑑定などをする話にでもなったら? 彼女の一人息子は、自分の父親が誰だか知りたいと思ったらどうなるのか? 自分が突き止められてしまえば、法的には養育費を払わなければならない。


(続く)

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