(二)-6

 もう互いに遠く離れてしまったことを、一通り、暗に確認し合うと、彼女は巨勢にスマートフォンの写真を見せてきた。彩夏の隣に彼女の一人息子が笑顔でピースサインをカメラに向けていた。小学校の頃のものだろうか。そして、画面を次々とスワイプさせて、息子の成長記録を見せてもらった。

 正直なところ、それらは巨勢にはどうでもいいことだった。「関係ない」と一蹴して席を立っても良いとも考えたが、そういうことは一般的にはしない。そこで、笑顔を作り「かわいいね」とか「反抗期とかは?」などとそれらしい話題を振った。すると彼女は、実体験に基づく、一人息子の世話の奮闘記を細かく教えてくれた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る