第20話 やりたいこと:まずは旅の疲れを癒やそう
第20話 やりたいこと:まずは旅の疲れを癒やそう
アリスたちに自分のことを説明したあと、俺たちは軽い晩飯を済ませて就寝することになった。
俺と、俺に仕えるメイド、ミカとルー。
そしてテイムしたシルバーフェンリルの
アリスとノアは外に天幕を張って寝ることになった。
就寝の挨拶を交わしてアリスたちを見送ると、スススッとミカたちが俺に身を寄せてくる。
「ふふっ、やっとご主人様と蜜月の時間を過ごすことができます♪」
「ん。早く主様にくっつきたかった……」
俺の胸に顔を埋めて深呼吸をする二人。
「ちょ、匂いを嗅がないで。汗掻いてるから絶対臭いって」
「全然臭くないですよ? むしろおへその下がうずうずする良い匂いです♪」
「スーハー、スーハー……クンカクンカ」
「ルー、嗅ぎすぎ」
美少女メイドたちに体臭を嗅がれることに羞恥を覚え、俺は寄り添っていた二人の身体を引き剥がす。
「先に風呂にしよう。二人は先に入って」
「いいえ、まずはご主人様が」
「ん。主様がお風呂に入ったあと、ミカとシロと一緒に入る」
「そうです。ご主人様はお風呂でゆっくり旅の疲れを癒やしてくださいね。そのあとミカたちはご主人様の残り湯で身も心も癒やしますから」
「残り湯は勘弁してくれ。でもお言葉に甘えようかな」
『神』スキルで創り出したこのアパートは、なぜかガス・水道・電気が普段通り使えるようになっている。
どんな原理でそうなっているのかは分からないが、便利だから深く追求するつもりもない。
便利なのは良いことだ。
湯沸かしスイッチを押して着替えを準備したり、ベッドのシーツを新しいものに変えたりしていると、やがて風呂場から湯沸かし完了のメロディーが聞こえてきた。
「じゃあ悪い。お風呂、先に頂くな」
「はい♪ ごゆっくり♪」
「いってらっしゃい」
『シロも行く!』
「はっ? 行かせるはずがないでしょうシロ。無邪気さを装ってご主人様の裸を除こうなどと創世神が許したとしてもこのミカさんが許しませんよ!」
『ミカ様、お顔怖い……』
「ミカ、相変わらず主様のことになると頭おかしい」
「だって! シロはご主人様とノーズキスしたんですよ! イチャイチャラブラブなノーズキスを! ミカもまだしたことなかったのに! 無邪気にしていれば何でも許されると思っている子供に現実の厳しさを教えてあげるのも、先輩メイドとしての務めじゃないですか!」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「なんでこの想いを分かってくれないんですかぁ!」
何やら激しく言い合っている二人に思わず苦笑を漏らしながら、俺は着替えを持って風呂場に向かった。
ボディーソープを使っ身体を洗うと、旅の間に積み重なった汚れが泡に混じって流れ落ちていく。
肌にこびりついた脂が剥がれていく爽快さに思わず溜息が溢れ出す。
泡を洗い流して湯船に足を挿し入れると、湯の温かさが肌を通して骨の芯にまで染み込んでくる。
「はぁ~~~~~~~……」
思わず声が漏れてしまうのは日本人の癖なのか。
温かな湯に浸っていると、身体の中心に溜まっていた疲れがお湯に染み出していくような錯覚を覚える。
「そういやアリスたちも風呂に入れてないんじゃないか? ミカたちが入ったあとに勧めてみようか」
風呂は命の洗濯だ。
この世界の人たちに湯船に浸かる習慣があるのかは分からないが、きっと気に入ってくれるだろう。
そんなことを考えながら一人の入浴を楽しんでいたのだが、残念ながらその至福の時間は長く続かなかった。
脱衣所――洗濯機なんかが置いてある狭い空間だが――から物音が聞こえてきたと思うと、素っ裸のミカとルー、そして謎の裸の少女が風呂場に乱入してきた。
「ご主人様! ミカがお背中を流してさしあげますよ!」
「ルーは主様のお股を洗って上げる」
「じゃあボク、ご主人様の手を洗ってあげるね」
「ボク? んっ? えっ! おまえもしかしてシロか!」
「そうだよ♪ ミカお姉ちゃんが人化の魔法を教えてくれたんだ♪ これでボクはご主人様といつでも一緒に居られるよ♪」
「シロだけをご主人様と入浴させる訳にはいきませんでしたからね。ですがミカたちもご主人様と一緒に入浴するのなら問題ないかと思いまして!」
「いや問題だらけだからなっ!?」
「わふっ……ご主人様、ボク、一緒に入っちゃダメだった……?」
小さな身体で俺を見上げ、悲しげに瞳を潤ませるシロの姿を見れば、
「ダ、ダメって訳じゃないんだけど」
思わずそう答えてしまうのは仕方の無いことだ。
「それよりみんな、さすがに裸なのはちょっと勘弁してほしいんだけど」
白い肌。
浴室の照明を受けて存在感を存分に発揮するメイド二人の乳房と、まだ幼さを残している成熟しきっていないシロの肢体。
素っ裸の女性の裸は、旅から帰ってきたばかりの今の俺には目の毒だ。
自然に股間の一部に血が集まることを自覚して俺は慌てて手で隠した。
「うふふっ、ご主人様、隠すことないですのに」
「ん。ルーたちが優しく洗ってあげるからね」
「ボクも頑張るね、ご主人様!」
「ちょ、待っ……っ!」
メイドたちは強引に俺の手を引いて湯船から立ち上がらせた。
肩を押して風呂用の椅子に座らせると、自分の身体に直接ボディソープを塗りたくって抱きついてくる。
石鹸に塗れた柔らかな乳房が肌に触れ、その柔らかさが引き金となって頭の中が妄想に染まっていく。
「主様の、元気になった……♪」
「ふふっ、たくましいですご主人様」
「ルーたちたくさんご奉仕するから、好きなだけ旅の疲れを吐き出してね」
「ボクも頑張ってご奉仕するね!」
「ちょ、待って、待って、そこはダメ……ダメ……アッーーーーーーー!」
こうして――。
旅の疲れを癒やすために入浴したはずなのに違う意味で疲れ切ってしまった俺は、メイドたちに挟まれながら狭いベッドで気を失った――。
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