フラれた恨みはどこへいく 4ページ目

『ね、ねぇ、奈乃ちゃん。さっき言いかけたのって何かな?』


『えっとー、朱音先輩がリアコン王子に好意を寄せてて──』


『す、ストーーーーーープッ。ど、どうしてそれを知ってるんですかっ!』


『丸わかりでしたからねー。でも、他の人は気づいてないので、安心してくださいね。ちゃーんと、二人だけの秘密にしますから。そう、二人だけの秘密だよー』


 いつからバレてたのよ……。って、私自身が気づいたのは最近なのに。


 そこも聞きたいけど、怖くて聞けないよぉ。


 それより、『二人だけの秘密』を二回も言ったのも怖いし……。


 絶対弱みノートに書くよね。大切なことだから的なノリで二回も言ったんだから、書かないという選択肢はないはずよね。


 と、とりあえず、本題へ話を逸らしてうまく誤魔化さないと。


「え、えっと、拓馬への復讐に協力するってどういうことです?」


「それがさぁ、聞いてよ、あの男ね、『俺が愛してるのはキミだけだ』とか言いながら、六股もしてたのよっ。ひどいと思わない? それでも、わたくしはあの男が好きだったんだけど、そこにいるリアコン王子と新聞部の部長さんに説得されて──」


「ち、ちょっと待ってくださいよ、どうして僕の名前がリアコン王子に変わってるんですかっ。さっきは普通に呼んでたのにぃぃぃぃぃぃ」


「んー、ノリって大事でしょ?」


「ノリで呼び方を変えないでくださいよぉぉぉぉぉぉ」


 ご愁傷さまね、管君。アナタの名前が元に戻ることはないのよ。少なくとも、今はね?


 それにしても、拓馬が六股もしてただなんて、クズ男の極みじゃない。結局イケメンって、みんなそういう考えなのかな。


 つまり、管君もクズ男という可能性が──って、それはないよね。そもそも、三十路近い人がJKに手を出したら犯罪なんだし。うん、だから管君は決してクズ男じゃないんだからっ。


 というか、綾崎さんも説得を手伝ってくれたんですね。あれだけツンデレ嫌いとか言ってたのに。ううん、そうじゃないよね、きっと管君が綾崎さんに協力してもらうよう、頑張ってくれたんだよね。


「あ、あの、舞星さん、拓馬の悪行を詳しく話してくれませんか?」


「それは構いませんわ。あの男はね、他にカノジョがいることを隠して告白してくるのよ。ありえないでしょ、しかもさ、バレたときになんて言ったと思います?」


「え、えっと、想像がつかないかなぁ」


「『俺はプレイボーイだから、女の方から寄ってくるんだぜ、別れたければ勝手にすればいい』とか言うんですのよっ! でも、顔がイケメンだから別れるのが惜しくて……」


 知らなかったよ、ここまでのクズっぷりだったなんて。


 イケメンでハーレムとか、ラノベの世界だと思ってたのに。


 空想の世界から現実世界に転移でもしたのかな。


 いやいやいや、そんなわけないからっ。きっと、空想と現実の区別がつかなくなって、ラノベの主人公になりきってるだけだよね。うん、絶対にそうに決まってるもん。それでも、女の敵であることには変わらないけど。

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