復讐は蜂蜜のように甘かった 12ページ目
「よく気づいたのぉ、その通りじゃよ。とは言っても、騙したわけではない、夢を売っただけじゃから、問題があるわけないじゃろ」
「はっ、理事長、待ってくださいっ。おい、神崎、その手に持ってるのはなんだっ! はっ、まさか……。り、理事長、外を、外を見てください」
「なんじゃ騒々しい。外など見ても──」
やっと気づいたようね。
あの放送を聞いて、理事長室に視線を向ける生徒たちが大勢いるのよ。
とはいっても、私も奈乃ちゃんのアイコンタクトでわかったんだけど。
だってここの会話は、すべて放送室を通じて学園内に伝えられていたのだから。こんな方法を思いつくなんて、さすが悪女の極みね。
「どうやら、年貢の納め時ね。もはや、言い逃れは出来ないよ。大人しくこの学園を去ってください」
「ぐぬぬぬぬ……」
「理事長、名案があります、これは演劇の練習だと言い切れば──」
「加地先生、ばか、ですか?」
「西園寺、教師に向かってなんだその口の利き方は」
「いえ、もう教師ではないでしょう。ここの会話は筒抜けなのをお忘れでしょうか?」
「はっ、そ、それなら、校内に残ってる生徒にワイロを──」
人って追い詰められると、意味不明なことを口走るのね。
これはこれで勉強になりましたよ。
それに、往生際が悪い人ってかっこ悪すぎね。
「加地先生っ、ワイロというのは、生徒だけなんですかー?」
「当たり前だろっ、ここにいる者たちの口止めさえすれば──」
「で、も、SNSで拡散されたら意味がないですよねっ。か、勘違いしないでよねっ。これは別に、加地先生のために助言したわけじゃないの。ただ、現実を教えてあげただけ、なんだから」
「そ、そんなぁ……」
これでやっと終わりましたね。
内心ヒヤヒヤしたけど、奈乃ちゃんのおかげで助かったよ。
「理事長、最後にひと言いいですかー?」
「な、なんじゃ」
「高い勉強代になりましたねっ。それと、卒業おめでとうございまーすっ」
「くっ……。ワシの人生がこんな小娘に潰されようとは……」
「では、校則に従いまして、理事長、ならびに加地先生のクビを通達しますね。以上、リベンジャーズからの報告は終わりですっ」
これで残りの復讐対象は拓馬だけ。
待ってなさい、この恨みは必ず晴らしてみせるんだからっ。
その場に倒れ込む二人を無視し、私たちはリベンジャーズルームへと足早に戻り出す。
その道中、私の心は最高の前菜を食べ終わった満足感で満たされていた。
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