真剣な話には笑いがつきもの 4ページ目

「来栖先輩、僕が何か悪いことしたんですかっ」


「うん、万死に値することをしたんだよ。だって──」


 えっ、管君が葵ちゃんに何かしたってことなの。

 いくらリアコン王子とはいえ、怒らせるようなことをするとは──。


「リアコン王子は、ボクの会長を敵視してるから。毎回、ボクの会長と反対意見を言って困らせてるし。ひょっとして、わざと敵に回ることで、ボクから会長を奪う作戦かな」


 あははは、そんなことだろうと思ったけどね。管君が誰かを傷つけるなんて、私には想像できないもん。どんなにイジっても、管君が女子に怒鳴ることは絶対にないし。


 って、こ、これは、別に心配してるわけじゃないのよ。私の居場所で空気悪くなるのがイヤなだけ、なんだから。そうよ、ただそれだけなのよ。


「違いますからぁぁぁぁぁぁ」


「ねー、リアコン王子なんてどうでといいからー、早くなのちゃんのスマホを見ようよー。サキはそっちにしか興味がないのだー」


「私も興味があるかなー。記者魂が疼くというか、禁断のメモリーに何が残ってるのか楽しみだよー」


「きっと何気ない写真とかに決まってるんだからっ。みんな期待しすぎると、後悔するだけだよっ。奈乃ちゃん、パスコードとかって──」


「外してあるから安心してねー」


 はっ、ツンデレの直感が言ってる。これは狡猾な罠よ。その証拠に奈乃ちゃんが天使の笑顔を浮かべてるもの。


 くっ、今ならまだ間に合う、大人しくスマホを奈乃ちゃんに返して──って、それはできないじゃない。


 だって、早紀先輩が光り輝く瞳で見てるんだもん。あの顔を見せられたら、期待に応えるしかないよ。


 こうなったら腹を括るしかないようね。奈乃ちゃんが何も仕掛けてない可能性もあるし。


 宝くじで一等が当たるような確率だけど……。


「う、うん。それじゃ、スマホの中身を──って、これは……!?」


「会長の巫女装束姿は即死級だよ。メイド服も可愛すぎて、ボクはこのまま冥土に旅立ってしまいそう」


「わぁー、可愛いなー。サキも着てみたいよー、朱音会長、これはどこで撮ったのー?」


「これはスクープですね。タイトルはツンデレ会長の隠された趣味。きっとツンデレを地獄に落とせるほど、悪名が広がるに違いないよ」


 予想通りの結果で涙がでちゃうよ。


 そうよね、奈乃ちゃんは腹黒系悪女でしたもんね。


 微かな希望を抱くこと自体間違いだったもんね。


 でも、これはさすがに恥ずかしすぎだよ。おかげで、顔が熱くなってきちゃったじゃない。いやいやいや、それどころじゃないよ、新聞にでも書かれたりしたら……お先真っ暗な高校生活が待ってるだけになるじゃないのっ!


 そうよ、私は陰キャは卒業してツンデレとなったんだから、あの頃に戻るなんてクイーン・オブ・ツンデレの名折れだよ。

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