生徒会役員は個性が強い 5ページ目

「えっと、来栖さんはひょっとして──女子が好きだったりするんですか? べ、別に私は女子好きでも気にならないんだけど、ほんの少し興味があるからよ」


「ボクは女子好きじゃない、よ。会長が好きな普通のJKなんだから。でも、会長がそう言ってくれて嬉しいかな。ボクの愛を受け入れてくれたってことだから」


 もっとタチが悪いですからぁぁぁぁぁぁ。って、顔が近い、近すぎるよっ。


 くっ、思ったより力が強すぎて──キスする寸前だったじゃないのっ。


「く、来栖さん、落ち着こうよ。来栖さんの気持ちは十分にわかったから。だから、もう少し離れてくれないとっ」


「そう、だよね。新しい名前が決まったことだし、誰もいなくなってから、だったよね」


「どっちも違うからぁぁぁぁぁぁ」


 妄想が激しすぎる……。というか、キャラが強すぎるのね。


 悪い子じゃないんだけどさ。


 おかげで、私の心臓は今にも口から飛び出しそうだよ。


 深く深呼吸して心を落ち着かせないと。……よし、少し落ち着いたし、他の人の意見も聞いてみるかな。


「愛の巣以外にいい名前とかありますかー? もちろん、愛の巣なんて却下ですけどねっ」


「朱音会長ー、サキが提案した名前は……」


「当然、却下に決まってますっ」


「うぅ……。ナイスなネーミングだと思ったのにー」


 先輩なのに潤んだ瞳が可愛いすぎだよ。なんかこう、胸がキュンって締めつけられちゃう感じだし。これがロリの持つ力というわけね。危うく、その名前にしちゃいそうだったじゃない。


 まったく、まともな意見はないのかしら。


 それにしても、奈乃ちゃんが珍しく静かで──って、ノート、あのノートを出して何を書いてますのっ。


「な、奈乃ちゃんは、そのノートに何を書いてるのかなっ」


「えっ、聞きたいですかー? 聞いたら後悔すると思いますけどー」


 出たよ……あの偽天使の笑顔。


 聞きたいけど、聞いてしまったら、きっと心が闇堕ちしちゃいそう。ここは好奇心に蓋をして、議論を再開させないとね。


「奈乃ちゃん、やっぱり遠慮しておくねっ。──コホン。それで、もっと人の心に響くような名前とかはないのかな?」


「西園寺会長、僕は反対だって言ってるじゃないですかっ」


『あっ、復活したのね』


「えっと、反対ってひとりだけじゃないの。もう観念して名前変えようよー、高校浪人した管君っ」


「ぐはっ。ろ、浪人なんて僕はしてませんからっ。現役で高校に──」


「ハルくん……。いくらなんでも、その顔でサキより年下だなんて、誰も思わないよー。だから、認めた方が楽になれるよ?」


「三須先輩と比較したら、誰でも留年扱いになるじゃないですかー」


「ふぇーん、ハルくんにセクハラされたよー」


「せ、セクハラって、僕は何も──」


「女の子を泣かせるなんて、管君最低ー」


「これだから頭固すぎ君は……」


「スガ君ってドS趣味だったんだね」


 一斉に管君へ向けられる軽蔑の眼差し。


 乙女たちから放たれた氷の矢は、容赦なく管君の急所に突き刺さり、彼のHPを真っ黒に染める。どうやら、即死級のダメージだったようで、声を出すことなくその場に倒れ込んでしまった。


 これで邪魔者はいなくなったね。自分でやっておいてなんだけど、ほんの少しだけ可哀想かな。でも仕方ないよね、女の子を泣かせたのは事実なんだし。

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