生徒会役員は個性が強い 6ページ目

「さてと、やはり新しい名前は、会長である私自らがつけるしかないね」


「ボクはその名前でいいと思う、よ」


「あ、あの……私はまだ何も言ってないんだけど……」


「大丈夫、だよ。だってボクと会長は──心から通じあってるから」


「通じ合ってないからぁぁぁぁぁぁ。はぁ、はぁ、来栖さんは話を飛躍させすぎだよ」


「来栖さんだなんて、そんなの他人行儀すぎる、よ。ボクのことは、葵って呼んで欲しい、かな」


「わかった、葵ちゃんって呼ぶから……。だから、も、もう少し離れてよねっ」


「じーっ、朱音先輩は百合もいけるっと。これは大切なことだから、きちんとメモに残しておきますねー」


「ダメぇぇぇぇぇぇ、奈乃ちゃん、お願い──一生のお願いだから、それだけは書かないでぇぇぇぇぇぇ」


 私は涙目になりながら、奈乃ちゃんへすがりついた。必死な顔の私に対し、奈乃ちゃんはいつもの笑顔を向けてくる。頭では冗談とわかっていても、1%でも可能性があると思うと、心が不安に蝕まれてしまう。


 もはや、先輩と後輩の関係というよりも、年齢が逆転した姉妹のような関係に近かった。


「冗談ですよ、朱音先輩。私がそんなこと書くわけないじゃないですかー」


「そ、そうだよね。私、奈乃ちゃんを信じてるよっ」


「ふふふふふ。そんなことより、朱音先輩の案を聞いてみたいんですけどー?」


「その不敵な笑いが気になるけど……。えっとね、私が考えた生徒会に変わる名前はね、その名も──リベンジャーズだよっ。ん〜? あまりのセンスのよさに、みんなを固めちゃったかなっ?」


 あれっ、みんなの視線に少し違和感を感じるよ。


 はっ、そっか、自信満々のドヤ顔がいけなかったのね。やっぱり、どんなに自信があっても、謙虚な姿勢は大切だよね。


「朱音先輩……。さすがにそのネーミングは、なんの捻りも感じなくて面白味に欠けますよー?」


「愛する会長の意見に従いたいけど、その名前はいただけない、かな」


「そもそもー、生徒会は生徒のために存在してるのだー。リベンジャーズだと、真逆の意味になっちゃうよー」


 そんな……まさかの全否定だなんて。でも、早紀先輩の言うことには一理あるね。


 しかーし、私には生徒会長特権があるのよ。つまりそれを使えば──。


「ふっふっふっ、それなら、今ここで生徒会長とっ──」


「あっ、そうだ朱音先輩。知ってると思いますけど、生徒会長特権を使っても、その内容に不服があれば、役員から不信任決議案が出せますからねー。役員の半数以上が賛成すると、生徒会長を解任できるんですー」


「ふぁっ!?」


 そんなバカな……。


 っとこれは、奈乃ちゃんのイタズラに決まって──なかったよ。生徒手帳にしっかり書かれてるし。


 くっ、あの理事長の言葉を鵜呑みにしたのがいけなかったよ。


 落ち着くのよ朱音、まだ活路はあるはずだから。普段まったく使わない頭をフル回転させるのよ。今ここで使わないと、一生使わない気がしますっ。


 リベンジャーズ……リベン、ジャーズ……。

 はっ、そうか、これなら賛同してくれるはずね。それに全員(ひとりはまだ復帰してないけど)から賛同を得られなくてもいいのよ。


 だって、生徒会長の解任は半数以上必要なんですし。


 つまり、二人が賛同してくれれば、私が解任されることはないんだからっ。

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