生徒会選挙はツンデレで 12ページ目
「あ、あの……わ、私……。すぅ──はぁ──。私はこの金坂学園が嫌い……でした。友だちはいないし、クラスでも影が薄いし、ただ勉強にきてるだけ、という、つまらない学園生活を一年送っていたのです」
私、何を言おうとしてるんだろ。こんなこと言ったら──支持率なんて下がるだけなのに。
口が勝手に動いて言葉が止まらないよ……。
「一年間、好きなモノを断ってまで手に入れたのに、一瞬で私の前から消え去ってしまいました。で、でも、そんなとき……」
ま、待って、ここで復讐のことは言えないから。
お願い、それ以外のことなら何を言ってもいいから、それだけはやめてよ。
「ひとりの大切な人と出会いました。後輩、なんですけど、初めて会ったのに、私の選挙を手伝ってくれるって。本当に嬉しくて、初めて高校生活を楽しく送れた気がしました」
いやぁぁぁぁぁぁ──。
復讐の話もダメだけど、それも同じくらいダメだからぁぁぁぁぁぁ。
これじゃ恥ずかしすぎて、もう奈乃さんに会えなくなるじゃないの。
「だから私は……その人と楽しい高校生活を送るため、この生徒会長選でどうしても勝ちたいのです。べ、別に私は生徒会長になれなくても、いいんですけど、その、こ、後輩のため、そうよ、後輩のために負けられないの。だって、その人は私が一番大切にしている人、だから。か、勘違いしないでよねっ、もちろん、生徒のみんなも同じくらい、好きなんだから……」
これ絶対誤解されるからぁぁぁぁぁぁ。
立候補者の演説が、なんで公開告白みたいになってるのよ。
恥ずかしすぎて、私の黒歴史に新たな一ページが追加されたよぉ。
というか、拍手? こんなに大きな拍手、初めてだよ。しかもスタンディングオベーションとか、どうして……。
ま、まさか、ツンデレ神が降臨して力を貸してくれたの?
そうか、これがクイーン・オブ・ツンデレの力というわけね。
会場を賑わせる拍手の嵐は数分間続き、司会者ですら進行を忘れるほどだった。私は一礼すると、しっかりとした足取りで舞台袖へと姿を消した。
「盛り上がってるところ恐縮です。そ、それではー、早速、投票に移りたいと思います。制限時間は五分、レッツスタート!」
はわわわ、私、なんて大胆なことを……。
今になって手が震え出して、スマホが上手く操作できないよ。
お、落ち着いて投票をしないと──。よし、これであとは結果を待つだけね。
大丈夫、大丈夫だよ。私、結果がどうあれ、後悔なんてしないもん。
だって、奈乃さんはきっと──結果に関わらず、ずっと今の関係でいてくれるからっ。
緊張で強ばっていた私の顔は、いつの間にか満面の笑みへと変化する。心音は大きな音を立てているけど、心は完全に落ち着いていた。
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