第3話 生徒会選挙はツンデレで

生徒会選挙はツンデレで 1ページ目

 この支持率なら当選確実ね。


 私の演説で心を打たれた人が多かった、ということよ。


 やっぱり、果報は寝て待ってよかったわね。


「さすがです、朱音先輩。支持率が九割を超えるなんて、元陰キャとはもう呼べなくなりましたよー」


「こ、これくらい、クイーン・オブ・ツンデレなら当然の結果よ。で、でも、少しだけ、ほんの少しだけは奈乃さんに感謝、してるんだからねっ」


「朱音先輩……。あっ、そう言ったそばから、支持率が急落して──た、大変です。こんな支持率、見たことありません。マイナス百パーセントだなんて……」


「ふぇっ!? ま、マイナスなのっ、支持率の最低ラインはゼロのはずじゃ……」


「お、恐らく──ツンデレが反転して、ツンツンになったのが影響だと思います」


 ツンツンって何よ。


 それって、単に嫌われてるだけってことじゃない。


 ありえない、これは夢よ、きっと悪夢に違いない。だから早く目覚めないと──。


「──かね、朱音。いつまで寝てるの、そろそろ起きないと遅刻しちゃうじゃないの」


「はにゃ……。あと五分、これは生徒会長命令なんだからねっ」


「何を寝ぼけてるのよ。それに、今日は演説があるからって、学校に早めにいくって言ってなかった?」


 もう、お母さんこそ寝ぼけてるんだから。


 私はすでに生徒会長なのよ。


 だから学校にいかなくても……。


 って、生徒会長は学校を休んでいいんだっけ。


 ううん、それ以前に選挙の記憶が──。


 はっ、違うよ、私はまだ生徒会長になってないもん。今日は大切な演説初日だから、いつもより早めに登校を……。


 ぎゃぁぁぁぁぁぁ──。


 時間、これじゃ普通に遅刻しちゃうよ。お、落ち着きなさい、これはきっと目覚まし時計が壊れて──るわけないじゃなーい。


「お母さん、なんでもっと早く起こしてくれなかったの!」


「何度も起こしたわよ。ほら、早く着替えて朝ごはん食べなさい」


 ベッドから勢いよく起きたのはいいけど、朝ごはんを食べてたら遅刻は確定よ。背中がくっつきそうなぐらいお腹ぺこりんだけど、遅刻するよりはマシかな。


 これはまさか、私が生徒会長になるのを阻止しようと、睡眠という何者も抗えない力を使ってくるだなんて。これが魔性のやり方なのね。


 許せない、いくら真っ向勝負じゃ勝てないからって、こんな卑怯な手段は許せませんよ。


 っと、こんなことを考えてる場合じゃなかった。早く制服に着替えないと。あれ、制服はどこに片付けたかな、いつものところにないんだけど。


 はっ、これも魔性の差し金なのね。


 我が家にまで侵入してくるとは、恐るべし魔性の執念……。


 部屋着のまま探し続けること十五分、制服があったのはいつもの場所ではなく、そのすぐ横だったなんて……。


 灯台もと暗しとはまさにこのことね。


 私はいつもより数倍の速さで着替え、学校へ全力疾走で向かっていった。

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