復讐の下準備と悪女な後輩 12ページ目


「部長さん、朱音先輩のポスター見せてもらえますかー?」


「はっ、麗しき奈乃様のため、パソコン部の総力をあげ、作らせていただきました。今すぐにお持ちいたしますので、奈乃様専用のイスに座りお待ちください」


「なるべく早くお願いしますねー」


 何よ、『麗しき奈乃様』って。


 しかも専用のイスまであるなんて。


 だいたい、心を深く傷つけられたのではないんですの!


 はっ、これはまさか……パソコン部というのは、Mの集団というわけですね。用語にソフトとかハードとかありますし。


 つまりパソコン部とは、ハードとソフトをバランスよく使いこなし、自分の欲望を満たそうとするのね。そうよ、たとえ、保存し忘れで数時間の作業が無駄になったとしても、何度でもやり直すんですもの。


 Mを極めた者たちの集団、それこそがパソコン部の正体なのですね。


 おそるべしパソコン部……。


「はうっ、い、いったーい。奈乃さん、いきなり叩くのは反則だよ……」


「朱音先輩を偏見的妄想の世界から戻したんですよー。それとも、ノートに書いた方がよかったですかー?」


「い、いえ、ノートは遠慮しておきます……。って、なんで、私が考えてることをわかったのよー。奈乃さんって実は、エスパーとかなんですかっ?」


「そんなわけないですから。朱音先輩がわかりやすいだけですよー」


「私って、そんなに顔に出やすいのかな?」


「ですねー。隠し事とかできなそうですし。まぁ、それはいいんですけど、完成したポスターはこれですよー」


 あっ、すっかり忘れてました。


 パソコン部というM集団のせいよ。


 奈乃さんに服従するなんて──っと、また顔に出てしまいますね。


「これが選挙ポスターなんですね。なんか本格的で──」


 確か制服にするって言ってたのに、巫女装束でしかも胸の辺りが私より……。


 待って、これは選挙ポスターじゃないよ。

 だって背景が喫茶店っぽいもん。


 どうみても、アイドルのポスターみたいな仕上がり具合だし、これは──。


「奈乃さん? これってまさか……」


「えっ、選挙ポスターが気に入らなかったんですかー?」


「これのどこが選挙ポスターなんですっ」


「どこがって、ちゃんと真面目に作って……。あっ、間違って、販売用のポスターを渡してたみたいですね。本物はこっちですよー」


 何よ販売用って。誰に対して売るつもりなのよ。


 だって、あのときにデータは消したって約束したじゃない。


 はっ、私としたことが完全に油断しました。あれは罠だったんですね。


 さすが悪女……なんて狡猾な手口なの。


 くぅ、悪女だというのに完全に信じちゃうなんて、もう、私のばかーっ。


 いや、これはチャンス、大チャンス到来よ。悪女の弱みを握る絶好の機会なんだから。

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