復讐の下準備と悪女な後輩 11ページ目

 やっぱり、根っからの悪女だよ、奈乃さんは……。


「着替え終わったけど、あの写真はちゃんと消してよねっ!」


「もちろん消しますよー。それじゃ、本番撮影いきますねー」


 信じて、いいのよね。


 さすがに、本気じゃないはずよね。


 いくら、腹黒で計算高くて悪女の極みでも、そこまではしないって、私は信じてるからねっ。


「これで終わり、なのかな?」


「はい、あとはこの写真をポスターにするだけです。それに見てください、ほら、表情が柔らかくなってるでしょ?」


 あっ、本当だ。最初の写真よりも、最後の方が自然な表情になってるよ。


 奈乃さん、あんなこと言ってたけど、これが狙いだったんだね。


 ……疑ったりして悪かったかな。


「うん、これならきっと、いいポスターになるよねっ」


「ですよー。では、ポスターは完成までお待ちくださいねー」


 こうして、無事に撮影を終えた私は演劇部に衣装を返し、ポスターの出来上がりを楽しみにしていた。これで準備万端となり、あとは演説期間を待つだけ。


 きっと私ひとりなら、こんな風にすんなりと準備できなかっただろう。偶然とはいえ、奈乃さんとの出会えたことに、私は心の底から感謝していた。



「朱音先輩、選挙ポスターができましたよー」


「は、早すぎじゃないっ。昨日の今日で出来上がるとは思ってなかったよ」


 奈乃さんから電話で、私は昼休みにパソコン部という未開の地へ向かう。そこは、私のイメージと遠くかけ離れていて、とても陰キャのたまり場には見えなかった。


 おかしい、ここは本当にパソコン部なのかしら。


 なんかこう、もっとジメジメというか、壁には幼女のポスターやフィギアだらけだと思ってたのに。言うなれば、オタクの聖域、それが私のイメージなのよ。


 それなのにこれはまるで──開放的でオシャレなオフィスみたいじゃないの。


「朱音先輩、それは偏見ですよー。パソコン部だからといって、R指定ギリギリのポスターや、幼女のフィギアが置いてあるわけではありませんからー」


「はうっ。あ、あれ、声に出てましたか……?」


「いいえ。それより、やっぱりそんなこと考えてたんですねー。でも、元陰キャで社交性が低いから仕方がないですよ。だから、落ち込まないでください、朱音先輩っ」


「うぅ……。慰めてくれて、ありがとう奈乃さん。って、元陰キャとか言わないでーーーーー!」


 毒舌──その言葉で相手の心を抉って、思い通りに動かせる操り人形にしてるのね。


 非道よ、弱った人の心に漬け込むだなんて、悪女を通り越してもはや魔王よね。


 きっとパソコン部のみなさんも、心に深い傷を追ってるんだわ。可哀想に……あの笑顔の裏では、ナイアガラの滝のような涙を流してるに違いないよ。

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