ツンデレ誕生 5ページ目
「契約するかはおいときまして、あの、その、ツンデレって簡単になれるモノなんですか? 誰でもなれるのでしたら、話ぐらい聞こうかなって」
「ツンデレは、誰でもなれるわけではないのじゃ。選ばれし者、すなわち、この聖なる場所へ辿り着けた者だけが、なれるのじゃよ」
「そ、そうなんですか……。では、ここに辿り着けた私なら、その、ツンデレになれるんですよね?」
「うむ。だが、なれるのではない、ソナタはツンデレ女王としての素質がある。つまり、ツンデレとして生まれ変わるのが、運命ということじゃよ」
「運命……。陰キャな私が生まれ変われる……」
『運命』と『生まれ変われる』、その言葉に私は心が揺れ動いてしまう。断る気満々のはずが、不思議とツンデレという言葉に惹かれていく。
気がつけば、私の心はツンデレという魅力の塊に支配されていた。もし、陰キャからツンデレへとクラスチェンジできたのなら、鷺ノ宮君と付き合える可能性が高くなるし……。
「そうじゃよ、ソナタがここに導かれたのも運命。ソナタがツンデレという新しい道へ進むのは、この世界の理。つまり、頂点に君臨することが可能なのじゃ!」
「世界の理……。陰キャな私がツンデレとして、世界の頂点に君臨できる……そういうことなんですかっ!」
陰キャでも勝ち組になれる可能性。
いや、勝ち組どころではない、世界の頂点に君臨だなんて。この怪しい言葉を私は完全に信じ、ツンデレへのジョブチェンジを決めた。
わずか数分という短い時間での決断。
陰キャを卒業でき新たな道が私を待っている。
それなら、迷うという選択肢は私に存在しないのよ。
「もちろん、それも可能じゃよ。意中の殿方を手中に収めるのだって、呼吸するのと同じくらい簡単なことじゃよ」
「意中の相手……。わ、わかりました。私、契約します。そして、必ずやツンデレを極めてみせます!」
「うむ、それがいい。この契約書に、住所、氏名、年齢と学校名を書けば契約成立じゃ」
「はいっ! で、でも……お金って、結構かかるんですよね……」
高校生の私にとって、金銭問題は非常に大きい。私の一ヶ月のお小遣いは一万円、これ以上は払うのは無理なのだ。もちろんその一万円には──推し活代も含まれている。
だから、このチャンスはもったいないけれど、金額によっては断ろうと思っていた。
「そうじゃの、本物のツンデレを学ぶのじゃから、安くはないのぉ。入会金込みで学割をつけて──」
学割なんてあるのね。
でもこれは好都合よ、少しでも安くなれば、推し活に影響なんて……。
「トータル十万円(税込)じゃな」
「じ、十万円!?」
「そう、驚かんでくれ。今なら無利子の分割払いがあるのじゃ」
「ぶ、分割払い……ですか」
毎月一万円払っても十ヶ月かかる。
しかも、推し活がまったくできなくなるおまけつき。
こんな理不尽な生活を耐えられるわけないよ。
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