おぢぃちゃん と ゲーム

Kーヨッシー

儂が知らぬ間に…

22XX年秋のことじゃ。

儂は介護施設の一室にて、炬燵に入ってテレビを視ておった。


この儂が暮らす老人介護施設なんじゃがな、国営なんじゃよ。

じつは現在ではの、国営の介護施設にて暮らす老人が大多数となっておってな、儂も、その一人というわけなんじゃ。


っと、いうのものぅ、独り者ひとりものの老人が多くなってな、その者達が孤独死することが問題となっておったのじゃよ。

ゆえに、このような施設が造られるようになったのじゃと。


機械化された施設にはな、生身の職員はおらんのじゃ。

人が介在するのは、遠隔操作されたアンドロイドとしてじゃな。

普通は、全てAIアンドロイドが世話しちょるのぅ。


まぁ、人よりは介護が行き届いちょるでな、文句もないでな。


ただのぅ、老化にて耳は聞こえ難くなるわ、物も良う見えんでな、テレビ見るにも難儀しちょるんじゃよ。


それでも何とかテレビを視ておったんじゃが………VRゲームっとな?


ゴーグルを着けて立体映像を見るタイプと思っておったのじゃが…仮想空間へ意識を移して現実の如く実体験できるそうな。


いつの間に、そがぁな物が…

なになに、世に出て、すでに30年以上は経っておるのか?


いつも視るテレビ番組では、そのようなことは…まぁ、ニュースやドラマ、映画が主じゃし、しかも選んだジャンルに固定しておったでな。


これも技術進歩の弊害っというヤツかのぅ。

今日は補視器の調子が悪くてな、テレビの設定を変に弄ってしもうたのじゃ。


直すのも面倒ゆえ、そのまま視ておったんじゃが………思わぬ収穫じゃてな。


このVRゲームちゅうもんはな、仮想空間へ意識を移すもんじゃから、弱視や難聴とどころか、盲目とかつんぼなどの五感を失った者も、なに不自由なしに行動できるのだとか。


ゆえにな、VR空間にて生活しちょる者までおるそうな。


ほぅほぅ、そらぁ良いのぅ。

儂もよわい150越えておるでな、体のアチコチにガタがでておるでのぅ。


儂も欲しいが…いくら位するもんなんじゃろか?

金銭的には国からの支給金が貯まっておるでな、数万程度ならば問題はなかろう。


この歳になると無駄遣いもせぬし、ましてや旅行などするはずもないでな。


金の管理は国がしておってのぅ、一部は投資などに回されちょるそうな。

その配当金がバカにならんでな、結構な額となっとるんじゃと。


まぁ、儂ら老人が身罷みまかるとじゃ、その浮いた資産は国庫へとの。

国からしたら老人貯蓄あつかいなんじゃろなぁ~


なので、多少の贅沢は許されるじゃろ?

そがぁ思っちょるとな。


「山本さん、お散歩の時間ですよ」っとの声がな。


ドアを開けて現れたのはの、ナイスバディの美人さん。

さなえさんじゃ。

軽くウェーブが掛かった黒髪が腰まで伸びておるぞぇ。


一見、人間に見紛うが…AIアンドロイドさんじゃでな、人間じゃないんじゃよ。


「もぅ、そがぁな時間かぇ?」

時が過ぎるのは、早いもんじゃてな。


「そうですよぉ~

 仕度して出掛けましょうね」ってな、立つのを補助してくれるのじゃよ。

流石はアンドロイドじゃてな、成人男性の何人分近い力での、軽々とじゃて。


そして歩行補助器具を装着してもろうてから、お出掛けとなるわけじゃ。


工事現場や工場、それに自衛軍にて活用されちょるパワードスーツの劣化版と思えば良かろうか。


これがあるからの、走るのは無理でも歩くのは可能なんじゃて。


部屋の入り口で靴を履き、廊下へと。

他の部屋からも散歩へ出掛ける入居者が、AIアンドロイドに介護されつつ出てきておるのぅ。


まぁ、親しくもないでな、話すこともないのじゃが…


さなえさんと共に廊下を歩き、施設玄関へとの。

施設周辺には商業施設もあるでな、ここの入居者が買い物に向かうのは珍しいことではない。


ただの、ゲーム機器やソフトを売っておる店は、近辺にあったかどうか…どうじゃろか?

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