付録4 移動現象の色々
【付録の取扱いについて】
付録では本編で扱いきれなかった理論や考え方について解説していきます。本編を読む上で必須な知識ではないので読み飛ばし推奨とさせて頂きます。つまり、作者の自己満足のための文字列です。悪しからず悪しからず。
1. 移動現象のアナロジー
まず初めに〝移動現象〟とは、外から力を加えずに静止させた系の中で起こる自然移動のことである。身近な例で表現すると、調味料に漬けておいた食材全体に味が浸み込んでいくのも移動現象である。この例で言えば、それほど早い現象ではない様に感じるが、それは濃度と拡散距離に依存する。
拡散速度を表す式は以下の通り。
F = K d/dx C (式1)
ここで、Fは拡散速度、Kは拡散係数、Cは拡散質の濃度である。上記の式は拡散質を換えて、物質拡散、熱拡散および運動量輸送を表現できる。また、非定常状態を表す式も式1の積分から求められる。
d/dt C = K
式の定性的な意味合いは、二階微分が正の場合、つまり下に凸の場合、周りから流れ込みが起こり濃度が上昇する、逆に負の場合、つまり上に凸の場合、周りへの流れ出しが起こり濃度が低下することを意味する。もし、拡散以外の減少が起きていない場合は、二階微分が0、つまり全体が均一な状態が定常状態であることもこの式から予想できる。
2. 物質拡散
物質の拡散は濃度ひいては化学ポテンシャル勾配によって生じる。つまり、高濃度から低濃度に向かって物質が移動し、濃度を均一にしようとする。また、物質拡散係数は拡散媒によって大きく異なる。物質拡散係数は、拡散質と拡散媒の組み合わせで変化し、多様な値をとる。理論式や経験式での算出が可能な場合もある。逆に、拡散質の透過を阻害する膜等を用いることで、本来拡散媒が移動する現象が存在する。例えば拡散質を食塩、拡散媒を水した場合、食塩濃度を希釈するように、食塩濃度が高い方へ水が流れ込む。これを〝浸透〟という。これをさらに利用し、食塩濃度が高い方へ人工的に圧力を加え、食塩濃度の薄い側に淡水を移動させることも出来る。これを〝逆浸透〟といい、塩水から淡水を得る技術として利用されている。
3. 熱伝導
熱の輸送は温度勾配によって生じる。つまり、高温から低温に向かって熱エネルギーが流れ、温度を均一にしようとする。また、熱伝導係数は熱媒によって大きく異なり、放熱を目的とした設備などでは部材の選定が非常に重要になる場合がほとんどである。身近な例では、飲み物を冷やすために氷を使うとして、氷と飲み物の間に水を充てんするか否かで、冷却速度が約25倍の差が生じる。クーラーボックスの中には水を入れることを推奨する。また、同じ遷移金属でも、銀や銅は鉄の約5倍熱伝導係数が大きい。熱伝導係数は格子振動によるフォノンの移動の容易さによって決まるため、格子のバネ定数は密度に依存する。定性的には、バネ定数が小さくかつ密度が大きい物質ほど熱伝導係数が大きい。
4. 運動量輸送
運動量の輸送は運動量勾配によって生じる。つまり、運動量の高い方から低い方に向かって運動エネルギーが流れ、運動量を均一にしようとする。この現象は主に固体表面とその周りの流体の間で起こる。固体に外力がかかり動いた時、固体表面と流体の間で、
このように、拡散現象は身近な、それもあらゆる現象に関与している。特に、料理に関しては、加熱によるタンパク質の変性、と並ぶ程度には重要な現象である。ぜひ、愛する人に料理を振舞う際には、濃度勾配によって一方向へ流れが生じることを思い出してほしい。他意は無い。
以上
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