五月

友達(1300文字程)

「ミナくん」

休日のある日、ソファーのうえでストレッチをしていた湊音。そんな彼に李仁が洗い物を終えてやってきた。


「なぁに」

「今日ディバに行こう」

「ディバってアウトレットのでしょう」

「アウトレット行くついででさぁ」

「最近なかなか行ってなかったし行ってもいいけど。ウォーキングも兼ねて。週末雨だしね」

なんで普段行かないディバというアイス屋さんに行くのだろうか、湊音は李仁が見せた画面を見て納得した。


「ディバの商品券1000円ー! どうしたの?」

「友達が誕生日にメールギフトでくれたんだ」

「あそこ高いから見るだけだったもんね、それかご褒美の時くらい」

「そうよねぇ」

湊音はスマホを覗き込む。

「友達って誰だよ」

嫉妬だ。結婚前に李仁はかなりの数の相手がいた。付き合っていてもセフレと浮気していたこともあった。友達が少ない湊音にとっては羨ましいし、悪いことではないとは思っていたが。


「バーで仲良くなった人だよ。誕生日くらいかな、覚えててくれてるのかこうしてメールギフトくれる」

「そしたら李仁はその人の誕生日にメールギフト上げているのかい?」

「そうね」

そんなことは梅雨知らず。きっと他にもそういう関係はいく人もいるだろうから嫉妬するのも疲れそうである。

「実は去年動物園に行った帰りに行ったスープバーも彼からのギフト」

「ああ……そういえば」

珍しく動物園に行こうと言われて行った帰りにスープ専門店に寄って李仁が奢ると言ってたのだがそういうことかと。地元には無い店であった。



「でもさ、ディバって他のアイス屋さんに比べて店舗は都心に多いじゃん。アウトレットに出店したから行けるわけであって他は名古屋にしか無いじゃん」

「まぁそうだけど」

「よくみたら5月中旬で期限が切れる。李仁の誕生日は二月だろ。なんで近くの店にしないんだろうね」

「まぁ、そうだけども……」

「普通友達なら相手の近くの店選ぶんじゃ無いの?」

湊音は口を尖らせて言う。李仁は困った顔をした。


「それにまた今年もその人の誕生日にメールギフト送るの? てか会う予定はあるの?」

「んー、会えないかな。互いに仕事リズム違うしね」

「……そう」

李仁の表情みて言いすぎた、と湊音は黙った。


「確かに友達、て言うのかな?」

「シバとかジュリとか身近な人が友達って言うだろう。メールギフトだけの相手は友人とは言えんだろ」

「40過ぎると友人の定義も分からないよね……」

ふと李仁は思った。もし湊音とパートナーシップ協定を結んでいなかったら自分たちの関係は恋人なのだろうか、友人なのだろうか……。


それを湊音に言うと色々考えてしまうだろうから李仁は言うのをやめた。

「貰えるのはもらっといた方がいいわよ。さぁ行こう」

「うん」



そしてアウトレットに車で向かい、アイスクリーム屋のディバにつき一つ500円近くするフローズンスムージーを頼みオーバーした分は湊音が出した。

そして李仁がスマホを取り出して

「写真撮ろう」

と言うから湊音は頷いて店の前の看板が入るように撮影する。

「で。これを、くれた友達に送るの」

「ほぉ」

「さぁ溶ける前に、食べよ」

「うん」

湊音は李仁に友達が多い理由が分かった。



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