桜の下で誓う(777文字)
「生憎の雨ね」
「まぁ本番、こんな雨じゃないことを祈るだけだ」
「そう? あなたは雨男ぽいから……不安」
ジュリが傘を閉じて教会に入る。シバも遅れて。本当はタバコを吸いたかったのだが敷地内は禁煙だった。
街の中にある大きな教会。
2人は五月にこの協会で式を挙げることになった。
もうパートナーシップ協定を結んでいるし、互いに10年以上前に女性との結婚と子供をもうけて離婚したという異例の過去を持っている。
ジュリは今では見た目が女性であり、ボサボサ頭で髭面のシバの横に立っていたら完全に男女カップルである。
結婚には男女である必要もない、見た目も。
教会で式をあげるのはジュリの希望だったがシバもすぐ快諾した。
シバの生みの親がキリシタンだったのと、孤児院が教会の敷地内だったこともあった。
「断られるかと思ったわ、最初」
ジュリはキリシタンである。
「断る余地はない。ふつーの結婚式もどんな宗教でも造られた教会みたいなところでチューして古臭い昔と変わらない進行、前撮りでは和装、料理はフレンチ……訳わからんことしとるだろ。ジュリが映えそうなの教会だろーな」
「あら、和装では映えないの?」
シバはハイハイとめんどくさいって顔をしてチャペルまで行く道をシバが1人歩く。
「もー! 先に行かないでちょうだい」
シバは大きな十字架を見る。母親のことはあまり覚えていないが亡くなった母親が持っていた十字架を心身ともに弱かった兄が持っていて何かあるとそれを握っていたことを思い出した。
今では母も兄も死んでしまったのだが。
「ぼーっとしちゃって……」
振り向くとジュリは微笑んでいる。
一度は家族がいたがシバの不貞で全てを無くした。彷徨い、ジュリと結ばれ湊音という愛人もいるのにこれからもずっといると言ってくれるジュリ。
窓の外では強い雨で散る桜が。
「……なんでもねぇよ」
とジュリに軽くキスをしたシバであった。
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