筋肉(777文字)
「はいもう一回!」
「はぁい……」
とあるジムスタジオで湊音は気弱に返事をする。
しかしそんな彼の横で余裕な顔してトレーニングを、しているのは李仁である。
特に筋肉質ではないのだが体力があるのはやはり元ダンサーだということもあるのだろう。でもそれも20年前の話なのに筋肉の使い方が上手いのであろう。器用さにため息が出る湊音。
「さすが李仁ー。ここで湊音さんみたいに限界ーってなる人多いのよ」
と2人を指導するパーソナルトレーナーの明里だ。実は湊音の元カノでもあったりする。
「ちょっと待って! まだ僕は限界だなんて言ってないからね!」
「そーう? その筋肉が悲鳴をあげているのわからんだから」
「くそっ!」
2人とも40を超えてから本格的に明里の指導のもと体力づくりを始めて早四年。
まぁそこそこ同じ年代に比べてしてないよりかはしてたほうだという体力までいった2人だがやはり明らかに李仁の方が上だった。
「たく、なににしても李仁には敵わないや」
と湊音は少しいじけたように言うと李仁は笑った。
「ここでへばってどうする、剣道の先生が」
「そうだけども、うううー」
とやはり湊音は限界が来た。
「もう、ミナくんったらぁ……」
「李仁は自分のペースでやってくれ」
「ハイハイ……でもぉー」
と李仁はまだしゃべる余裕があるのだ。
「昨日の夜、あんなに激しかったのにぃ……」
ギクリと湊音。それを聞いた明里は赤面する。
「そ、そ、それとこれとは……違う」
と思いつつも湊音は李仁の激しさもすごいと思うと体が熱くなってきた。
「……はいはい、そんな話してないで湊音さんは少し休憩」
元カノに「さん」付けされるのは少しいろんな深みもあるような気がして複雑な様子である。
1人、別室に行きスポーツドリンクを飲み干す。スポーツは全くやったことがなくて30代前半で本格的に剣道を始めたもののまだまだだなぁと気を落とす湊音であった。
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