第69話 02対策会議

 その後、軍司令部から新天使の正式名称は天使型02ゼロツーであると発表された。俺たち兵士はすぐにその呼び名を短縮して、02ゼロツーと呼ぶようになった。

 しばらくしてから俺に帰還命令が下り、そのまま前線基地へと向かった。

 基地に到着すると、02を撃破するための会議が開かれる予定を聞かされ、そこに出席するようにとの命令を受けた。

 そして会議が開始されてすぐに、議長役であろうお偉いさんが末席の俺に問い始めた。

「わざわざ天使がご指名で倒しに来るほど敵に評価されている貴官に問いたい。天使型02を倒す方法に心当たりはないか?」

 俺はそれに対し、ここまでの道中で考えていた内容を語る。

「何らかの方法で足止めさえできれば、やりようはあるでしょう。しかし、それをしたところで多少の時間が稼げるだけで、あまり意味はないと思われます」

 俺のその返答が意外だったのか、会場のあちこちで息をのむ音がする。いっぱくの間をあけてから、続けて議長が問いかける。

「どういうことだ?」

「新しいはめ技を使ったとしても、すぐにそれに対応した03ゼロスリーが登場するだけだろうと思われるからです」

「そうか……」

 会場のあちこちで落胆のため息がこぼれる。俺はその雰囲気ふんいきを無視し、続きを語る。

「ですので、次は正面しょうめんから02を撃破します」

 俺のその発言を受け、驚いたような顔で再び俺に顔を向けた議長が問いかける。

「どういうことだ?」

「正攻法で02を倒すことができれば、たとえ03を作ったとしても同じことだぞという、マクシモに対する強力なメッセージになります。そうなれば、もう新しい天使型は出てこなくなると思われます」

 俺のその発言がとても意外だったらしく、会場のあちこちでざわめきが起こった。北部方面軍の司令官閣下が右手を軽く上げることでそれを制し、直接俺に問いただし始めた。

「できるのか?」

「小官一人では、とても無理です。しかし、精鋭部隊として名高い俺たち死神しにがみ殺しの部隊、その中でも最古さいこさんで最精鋭の小官の直属小隊で連携すれば、可能性は高くなります」

 俺のその発言に若干じゃっかんの驚きを見せながら、続けて司令官閣下が問いを発する。

「具体的にはどうする?」

 俺はそれに対し、できるだけ自信たっぷりに見えるように演技しながら、その方法を語る。

「小官の小隊には、幸いにしてセシルがいます。彼女はボディこそ一般の女性兵士並みになっていますが、その頭脳はオリジナルのままです。

 ですので、彼女の処理速度を生かすために多脚戦車に乗ってもらい、仮想の02とします。そうやって連携訓練を行い、02を撃破できるだけの能力を身に着けます」

 俺のその説明に対し、司令官閣下はじっと俺の目を見つめ、まるで真偽しんぎを確認しているかのような様子で質問を続ける。

「その訓練は、どのくらいの期間が必要だ?」

本音ほんねを言えば、二週間は欲しいところです。ですが、この状況では難しいでしょう。ですから死ぬ気で猛特訓し、一週間でなんとか形にしてみせます」

 俺の目を見つめることで、俺の覚悟を確認していたと思われる司令官閣下が一つうなずき、許可を出してくれる。

「良かろう、許可する。その大言壮語たいげんそうごに見合うだけの働きを期待している」

「はっ。微力を尽くします」

 こうして、俺たちの対02用の猛特訓の日々が始まったのだった。

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