螺旋回廊

神傘 ツバメ

        螺旋回廊

         



 あなたは、生まれ変わりを信じますか?



 私の名前は、長田 信織ながたしおん

 今まで働いていた会社を退職し、今は細々と年金とやらで暮らしている。

 最近は、陶芸や水墨画、木彫りで何かを作ったりと、悠々自適な生活を送っている。


 ——ように見せかけている。


 ある時、誰かは忘れたが、人が創るものには、魂が宿ると言っていた。

 それが何なのか、よく分からなかった私は、とにかくあらゆる有名無名なものを、観、聴き、感じるべく、そこからの人生の時間を費やした。

 そうして分かったのは、正確には、そのものに宿るのは魂ではなく、

 『魂の欠片』だと言うことだ。

 

 それを知った時、私は考えた。

 そして思い出した。


 記憶の淵にある螺旋を昇り、永久とも思える回廊の先を。

 

 それならば——


 私は門を創った。

 材料は木のみ。 塗るために使ったのは、自然で取れたもの。

 そこにほんの少し、秘密の液体を入れて。


 飲まず食わずで出来たのは、この世の言葉では形容し難い門だった。

 観音開きのその門は、


 左手の側が、白く揺蕩う柔らかき印象。

 右手の側は、黒き獄炎を思わせる、おどろおどろしい印象。


 門の前に立ち、昔良く着た気がする白い着物を羽織り、更に記憶の深淵へ。


 あぁ、懐かしい高揚感だ……


 少しづつ、少しづつ……その門は開いていく。


 そして私は叫ぶ。


「神でも悪魔でも、どちらでも良い! 遍く幾星霜の流れに於いて、我が名を刻みし、全ての創造物に!

描かれた物、彫られた物、織りなし物、塗り込められた物、その全てに我の血肉と魂を分け与えよ!

人が住まう地に! 人がおもねく未来に! 人の織りなす生活、紡ぎし時代のその全てに!  誰もが我を、忘れられぬよう。


そう、我が名は織田信長。 冠は—— 



『 第六天魔王 』



                             

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螺旋回廊 神傘 ツバメ @tubame-kamikasa

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