可愛すぎる幽霊との日常が怖くないどころか楽しんですけど、、
松本にぎり
プロローグ
今日僕は幽霊に出会った。
正確には幽霊じゃないっぽいんだけど。
何言ってんだこいつって思うかも知れないが、正直自分でも理解できていない。
出会って一週間になった今でもだ。
「ソイツ」はどうみても幽霊らしくない。
まず、「ソイツ」の見た目。
大体幽霊とかって言ったら血だらけの白いワンピースに長い髪を想像するだろうけど、「ソイツ」は違う。
とにかく「かわいい」のだ。
服装は白いワンピースなんだけど、清潔感のかたまりっていうか、その、透明感が半端じゃない。
このかわいさを誰かに知ってもらいたい。
誰のためにかは不明だが、「ソイツ」のステータス(?)をまとめてみた。
性別 (幽霊にあるのかは知らんが)
多分女子。というより女児。まあ、幼顔で身長の低いJKだったりするのか
も知れないが。
髪型 ショートボブ。(僕は女子の髪形には疎いからそこら辺についてはあっている
かどうかは怪しい)
顔立 とにかく幼顔で、整っている。将来(?)は女優クラスの美人になるに違いな
い。
声 まったくしゃべらん。というより何かを伝えようとしているのは分かるが、
いわゆる「霊感のない人間」である僕には何も聞こえないし何を伝えたいの
かが分からない。(それでもくっきりと目視できているのはなぜなのかは不明
だ)
身長 恐らく一五〇㎝から一六〇㎝位。ちなみに僕の身長は一八三㎝。
大体こんな感じだ。
僕の拙い言葉では伝えきれないだろうが、べつに誰かに伝えるわけでもないのでこんな感じでいいだろう。
まあ、とにかく。
このかわいい幽霊と僕は偶然にも出会ってしまったのだ。
でも、その出会い方は最悪だった。
ちょうど一週間前の深夜二時ごろ。サークルの飲み会に半ば強引に誘われた。
別に入りたくもなかったサークルだ。
活動内容も何をしているのか、まったくわからん。
そんなサークルの飲み会は何件もハシゴしたもんだから、結局解散したのが〇時ぐらい。
そこからベロンベロンに酔った千鳥足の先輩を家まで送り、何だかんだで帰路についたのが一時頃。
僕の自宅と先輩の家は大体三キロメートル位の距離感で、先輩ほどではないが、そうはいっても酔っていた僕は酔い覚ましに歩いて帰ることにした。
先輩の家から歩いて帰ったことは何回もあり、そこそこ見慣れた道ではあったが、時間が時間なこともあって、いつもとは違うどこかべつの町に来ているかのようだった。
どこか不気味で、でもどこか遠くにつながってそうなかんじだった。
しばらく歩いていくと道の中央に何かが蠢いていた。
目を凝らしてみると、それは黒猫だった。
黒猫なだけあって闇に紛れ込んでいて見えずらかったが子猫のようだった。
近づいてみると案の定逃げられた。
そして僕は何を思ったのか、いつの間にかその子猫について行ってみることにしていた。
暗い夜道のなか、なぜかその猫が歩いた後だけはくっきりと見えた。
そして。
そして出会ったのだ。
「ソイツ」と。
そこには
「子猫の親分がいて」
そうそう。
「ぼくはそいつとバトルして」
ん?
「そしてこのあたしを拾った、と」
これは僕は喋ってない。
喋ったのは、、、
「なにをビックリしとるん?」
まぎれもなく「ソイツ」だった。
「え、なに、おまえしゃべれたの?!」
「あたりまえじゃろ。今までの喋っとたんじゃけど、君が気づかんけん。無視されとると思うたよ」
「え、でも」
僕には今まで何も聞こえていなかったはず。
なぜ今さらになって?
「そうじゃねぇ、君の霊感いうんが強くなったんじゃろ」
霊感ない人間だと思っていたが実は自分にはこんな潜在的な感覚があったのか。
というか、そんなことより
「おまえ、バリバリの広島弁じゃねえか!」
「なんね、いきなり」
もっとさ、こう、清楚系のおとなしい感じの口調じゃないのかよ!
「そんなん、言われても」
「イメージとのギャップ凄ー」
「そりゃ、君が勝手に想像しよったウチのイメージじゃろ?」
まあ、そうですけど。
想像というか、妄想というか。
それにしてもこんな大人し気な子からまさかの方言が飛んでくるとは。
ギャップ萌えしてしまいそうだ。
もちろん、冗談だよ?
「というか、君」
本当にウチのことが見えるん?と「ソイツ」は言った。
「そりゃ、くっきりと」
そういうと「ソイツ」は少しうれしそうに
「ほんまねぇ....」
と言った。
ここで謝っておきたいことがある。
「出会いは最悪だった」なんて言っておきながら全然最悪もくそもない感じになってしまった。
まあ、半分は「ソイツ」のせいなんだけど。
でも、実のところ出会いは本当に最悪なものだった。
でもその話は今度話すことにしよう。
なんせ、この話をしようとすると、「ソイツ」が怪訝そうにこっちを見てくるのだ。
「そろそろ、ソイツ呼ばわりをやめんかね?」
唐突にそんなことを言われた。
確かにずっと「ソイツ」で呼ぶのもかわいそうではある。
「その、お前名前無いのかよ」
「名前は、思い出せんのよ。年かねぇ?」
「おまえ、何歳だよ」
幽霊に年齢なんて言うものがあるのかは知らないが、そして、女子にそんなことを聞くのも良しとは思わなかったがそんなことを聞いてみた。
「君、女子に年齢聞くなんてほんま、、、失礼な人じゃねぇ」
「まあ、それはすまん」
案の定、失礼だと言われた。
でも、相手のことを知るのに年齢を聞くのとかは普通だろ?
あと、年の話題振ってきたのむこうだし。
うん、だから僕はわるくない。
、、、、、はず。
そうだよね?
「別に言うても良いんじゃけど。幽霊になったんは一〇歳の時じゃねぇ。ほんで、幽霊になってからは、、、そうじゃね、八年くらいかね」
なるほど。
つまり今生きていれば一八歳なのか。
おいおい、あながちJKだってのは間違っていなかったみたいだ。
それと、年なんて言うんじゃんねえよ。
近所のおばちゃんにどやされるぞ?
「よし、分かった。お前の名前は僕が責任をもってつけてやる」
威勢よくそう言ったものの、僕のネーミングセンスは終わってることで有名だ。
小学生の時飼っていたアメリカンショートヘアにつけた名前が「ロン毛」だぜ?
ロン毛っていう言葉になぜかひかれてたんだろう。
そんなことより、名前。
まあ、あだ名的なもんで良いだろう。
本名じゃないんだから。
「ナナ。ナナなんてどうだ?」
「うん、良いんじゃない?」
「それじゃあ、今日からおまえはナナだ。よろしくな、ナナ」
「しょうがないねぇ。よろしく」
こうして僕と幽霊の日常がはじまった。
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