14、
「王子は、これから婚活イベントに参加していただくのが良いかと」
今いる会員では条件を満たせないため、今後開くイベントに参加する女性に、彼の気に入った相手がいることを賭けるしかない。
「ふむ、イベントというのが、この間の僧侶コンのようなやつか」
「職業や年齢、出身地やステータスなど、さまざまなくくりでの男女の集まるイベントを開きます」
僧侶コンは男性の職業で絞ったものだ。
前世では、二十代限定や、関東出身限定、バツイチ限定、オタク限定やラーメン好き限定など色々な需要があった。
自分の求める相手により、イベント参加を選ぶことが成婚への早道である。
「王子、いけません。一般庶民のイベントに参加するなど。
ご自身の身分をわきまえてください」
「一刻も早く世継ぎを作れと、口うるさいのはお前だろうが」
我慢に耐えかねたクレイが声を上げた。肩をすくめて言い返すルビオとの口喧嘩が始まる。
その二人のやりとりを見ながら、アリサは頭をフル回転させる。
今いる会員の中の女性に、ルビオ王子の要望を全て満たす人はいなかった。
なので、一対一のデートをセッティングしても、うまくいかないだろう。
(なら、婚活パーティは? 大人数でのパーティなら、話してみたら気の合う人も見つかるかもしれない)
この人たちなら絶対相性が良い、とお見合いをさせるよりも、パーティの方がチャンスが増えるはずだ。
(そうよ、王子様なんてハイスペックな男性、婚活パーティで絶対人気者になるじゃない……!)
異世界で婚活イベントを開く、という考えがなかったアリサは、良い考えがひらめき、気持ちが高揚し始めた。頭の中では、どんどんアイディアが膨らんでいく。
「なあ、ギルド内であまり騒々しくしないでもらえるか……」
個室の扉を開けて、ギルドで接客をしていたケビンが口元に人差し指を添えて注意してきた。静かにしてほしい、と。
おそらく、二人の騒々しいやり取りが外に漏れてしまっていたのだろう。
しかし、口の減らないルビオからの反論と、クレイの押し問答は続く。
アリサは、三人の男性の姿を遠目に見て、考えた。
(ほんとイケメンな三人だわ……。
婚活イベントに参加してもらえれば、女性陣が盛り上がりそうよね)
正統派美形、超絶ハイスペックなルビオ、物腰柔らかで凛としたクレイ、眼帯姿がクールでかっこいいケビン。
前世の現代日本だったら、女性から人気が出ないわけがない三人だ。
よし、とアリサの婚活アドバイザーの血が騒ぐ。
「ルビオ王子。あなたは素敵な女性と出会って、すぐにでも結婚されたいということですね」
静かにするしないで揉めている三人の間に割って入り、アリサが質問をする。
「そうだ。不本意だが、国の存続もかかっている私の使命だからな」
ルビオの言葉に、結婚願望は間違いなくあるのだと頷く。
「クレイさん、ちなみにあなたは独身ですか? お相手はいますか?」
王子側近のクレイに向き直り、優しく問う。
「はっ、私は恥ずかしながら独り身であります」
胸に手を当てる、王宮に使える者の敬礼をしながら答えるクレイ。
「それではケビンさんは、奥さんや彼女さんはいますか?」
転生した初日から、ギルドの端の場所を借り共に働いていたケビンだったが、そういえば女性関係のことは聞いたことがなかった。
ケビンは驚いたように左目を見開いたが、
「なぜ俺に聞く……。いないが」
腕を組み、素直に答えてくれた。
「なるほどなるほど。こんな素敵な成人男性が三人、パートナーもいないなんて、女性からしたらもったいないです」
大抵、素敵だなと思う男性には彼女や奥さんがいるものだ。恋愛に進むこともなく、諦めるのが常だろう。
でもこのイケメン三人は、未婚で彼女なし。
「では三人とも、私が成婚までプロデュースいたします!」
アリサが拳を突き上げて、声高く宣言した。
異世界で始めた結婚相談所、ここからが婚活アドバイザーの腕の見せ所だ、と決意をして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます