33 アンナが召喚したものは
「アンナ! 何をしている!」
入ってきたダルザス神官が責めるように大声を上げた。
「フクロウを飛ばしたはずだぞ!」
ダルザス神官はどかどかと礼拝堂に入っていく。アンナは少しも慌てる様子もなく小首を傾げた。
「ええ。わかっておりますとも。ですからこうやって、使役魔を召喚していたんですのよ」
祭壇に小さな手燭の火が揺れていた。祭壇の前には大小の円と六芒星が重なった魔法円が描かれており、古代文字で複雑な呪文が描かれている。
「そうか。そなたは中級召喚術が得意であったな。む……」
ダルザス神官は顔をしかめた。
「嫌な臭いがする。
「ええ、もう送りこみました。護衛のところにね」
「何?」
「ノア様お一人なら、神官兵だけでも捕らえられるでしょう? ちょっと剣は使えるけど、ダサい魔法しか使えないんだから、あの人。でも、護衛がいたら厄介ですわ。腕の立ちそうな殿方たちでしたので」
「なるほど。確かにそうだな。ノア様の魔法は、動植物と対話できる魔法だった」
「所詮、器の出来がよくないからですわ。ノア様になる前のあの娘は、少々見目の良いだけの、聖女見習いの中でも末席にいるおとなしい子だったんですから。それが再誕してからというもの、ちょっとばかり竪琴が弾けるからって調子に乗って……」
アンナはぎり、と歯をかみしめた。
(そういえば、アンナは次期聖女にと目されていたのだったな)
ダルザス神官はふと思い出す。再誕聖女が現れる直前まで、聖女見習い筆頭のアンナは次期聖女の最有力候補だった。
突然の再誕聖女の出現で、いまだ聖女見習い筆頭に甘んじることになったアンナの悔しさは想像に
「護衛がいなかったら今のラデウムでノア様の味方なんかいませんでしょう? あたくしの使役魔が護衛を足止めしている間に、さっさとノア様の確保をお願いしますよ」
アンナは妖艶に微笑むと、聖女衣の
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