僕の人生にイベントはいらない

@skri

第1話 

 キーンコーンカーンコーン


 授業の終わりを告げる鐘がなる。


 教室にいる生徒がめいめいに廊下へ出ていく。


 幾拍か遅れて僕も席を立つ、移動教室はめんどくさい、けど授業に遅れて先生に叱られることはもっとめんどくさい。

 だから歩く、けど……


「めんどいなぁ」


 廊下にはすでに同級生の姿はない。でも大丈夫、次の授業は生物だったはずだから理科室まで行けばよいだけだ。


 最小限の力で体を前に動かす、そうするとどうだろう一切足音を出さずに歩けてしまう。僕はうるさいのが嫌いだから、この歩き方を好んでする。


 こうしているとなぜか集団の中でも気づかれないことに気づいたのはちょっと前。そのときはこのまま僕はアサシンの道を行くんだなんて思ったりもした。

 けどアサシンなんて忙しない職業、僕の望むものとは対極だったりするので思いついた10秒後にはそんな夢捨て去ったよ。



 理科室があるのは向かいの棟の1階、ここからは階段を降りて渡り廊下を渡ればすぐそこだ。授業の鐘を10秒ほど過ぎることまで考慮して僕は歩く速度をさらに緩めた。


 そして階段に差し掛かった時


「離してっ!……きゃあっ!」


 えーーーー……



 僕の人生にイベントなんかいらないのに。

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