第30話

「新しい局は具体的にどのようなことを行うのですか?」


「まあ簡単に言えば開発支援および資源の管理です。

 今まで資源開発と言えば国の支援を受けてそれぞれ家ごとに行うというのが主だったと思います。

 国の支援を受けるというのは変わらないけれど、それぞれの家、領が持っている知恵およびノウハウを他領にも伝えることで、効率的に資源を採取していこう。

 そういったことを増進させるような局です」


「ということは、今まで通り個別に申請をして資金の提供を受けるという仕組みに変更はないですか?」


「いや、それは違います。

 国は新設される局にまとめて資金を提供します。

 皆さんは局に必要予算を申請して、それを受けて局が提供資金量を調整して分配します。

 加えて、いままで資源関係で納められた税の3分の2を局に回すことで、さらなる開発増進、資金の確保につなげます」


「資源開発のお金の流れをスムーズにして開発に手をつけやすくするということですね。

 それに他領での知恵を生かせる」


「そういうことです。

 なお、新たに局が新設された場合は今までの資源開発、資源採取における知恵や知識を提供していただければと思っています。

 知識の提供によるしがらみをなくし、どの領でも平等に情報の入手できるような仕組みを作りたいのです」


「お待ちください! それでは――」






 会議は難航した。


 今まで開発の知識を独り占めすることにより、国内の資源シェアを維持していた貴族からの反発がひどかったからだ。


 そりゃそうだろう。


 今まで自分たちの専売特許のような物であった貴重資源をほかの所でも生産できるようになってしまうかもしれないのだ。


 反発する貴族が出るのは想定済み。


 ただ、賛成の貴族の方が多かったため、多数決で新設されることに決定した。


 この局が新設されてしまえば、いくら反対であるとしても協力しなければ資金提供が受けられなくなってしまう。


 すでに資金が潤沢なところは協力してくれないかもしれないが、協力しなければ後の資源開発に影響が出るのはわかっているだろう。


 ごり押しのような形になってしまったが、こういった決め事が多数決で行われるのは基本なので、反対の貴族たちには我慢してもらいたい。


「随分とゴリ押したわね」


「まあな。でもこの仕組みはすごくいいはずだ。

 物価が下がって経済がうまく回るようになると思う。

 なんとしてでも通したかった」


「そうね。私もこれはうまくいくと思うわ」




 会議で出たこの仕事量なら新たに局を作るほどではないだろうという意見を踏まえて、新しく新設されるのは局ではなく国と貴族が協力して設立される組織と言うことになった。


 これにより貴族の参加が強制ではなくなった。


 その組織の名前はアインガルド資源開発協力機構に決定した。


 効果が出るには多少の時間を要するだろうけれど、少しでも国内の資源供給量が安定することを願う。

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