第22話

「……何なのよそれ」


「僕に聞かないでくれ。僕もよく知らないのだ」


 急いでククレアを呼んで伝えると、もちろん彼女も困惑していた。


 とはいっても、案外これの対応は簡単なのかもしれない。


 セールに関してはまた以前のようにやめるような声明を出せばいい話だし、行進は我々がしっかりと向かうからやめてほしいと通達を出せばいいのだ。


 これで現状はある程度落ち着くはず。


 ただあくまでこれは現状が落ち着くのであって、またいつ同じようなことが発生するのかわからない。


 だからと言ってセールを禁止するような法律を作るわけにもいかない。


 うちの国民はどれだけセールが好きなのか……。


 セールはたまにやるからいいのであって、日々がセールであればそれはただの物価下落なのだから。










 1週間後、ひとまず騒ぎは落ち着いた。


 今後、セールはあまり多くやらないようにしてほしいという通達を出しておいた。


 街道にあふれていた民衆も、後日出向いたときにしてくれと言ったところ、それぞれ村や町に戻ったらしい。


 ていうか、来たところでどうやってククレアを拝もうと思っていたのか。そこがよくわからない。


 我々にパレードでもしろというのだろうか。


 正直に言ってそんな時間はないぞ?


 まあ町村をめぐるというのは仕事として行っているから、その時にいつもより大きな歓迎を受けるだけ。










「何かと大変ですね」


「そうなんだよ。僕はあくまで仕事としてやっているだけだから、いちいちそんなに盛り上がられると困るんだよね……」


「とはいいますが、なんだかうれしそうですね」


「そりゃそうさ。祝われて、ほめられてうれしくない者などいまい」


 そうなのだ。


 確かに仕事の量は増えている。


 ただ、この国に住まう人が皆我々を祝福してくれているのだ。


 うれしいのが余計にたちが悪いわけで、もしちっともうれしくないのであればやめろというのもたやすい。


 ただ、明らかな好意だから……。


「まあそんなことで頭を悩ませていても、目の前に積んである書類は減りませんからね。お仕事、よろしくお願いいたします」


「……鬼畜だな」


「さぁ、民の手本となるべく、今日もせっせとやっていきましょう!」


 フィレノアはなぜか仕事をせかすときが一番楽しそうだ。


 教官に向いているのだろう。


 ククレアが言うに、ティニーはなかなかの優秀なメイドらしいし、それを育てただけはある。ということなのだろうか。


「むーッ」


 眉間にしわを寄せ、うねりながら仕事をこなしていると、執務室の戸が叩かれた。


「レイ、今戻ったわ」


「おお!ククレアお疲れ!」

「おかえりなさいませ」


 本格的に魔道具を設置すべく、最近は設置を担当する騎士団を出向いては設置の仕方をレクチャーしている。


 あの膨大な量の魔石はすべて魔道具へと作り替えられた。彼女1人の手で。


 ……嫌味を言われたのは言うまでもないだろう。


 まあよいのだ。完成したのだから。


「それにしても何日かかるのかしらね。領土が広いのも考え物よね」


 そう苦笑いしながらククレアが言ってきたので、僕も乾いた笑いを返す。


「あはは、そうだね。ちょっと大きすぎるかなとは思うよ」


 後半に行くにつれ目線が机の上の書類に、声の大きさも徐々にフェードアウトしていく。


 いまこの場にいる4人の目線は一転に集まっていること間違いなしだろう。


「この書類、どうにかならないのか?」




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