第19話 魔道具

「ひとまずは何とかなったが、これはどうにかしないといけないかもな……」


 今回の氾濫は、王都に近かったために何とかなったものの、アインガルド王国の広大な領土に数ある川、たまたま近かったのは奇跡といえよう。


 またいつどこで氾濫が発生するかはわからないわけで、首都から離れたところにある川では堤防すらまともに作られていないところも存在する。


 そりゃあこの領土に存在するすべての川に堤防を作っていては、何年かかるかわからないのだからしょうがないだろう。


 ただ、しょうがないで放っておけるような案件ではないのも事実。


「何とか対策を考えないといけないのだが……」


 現在の技術では不可能に近いだろうが、できれば王都にいてすべての川の状態をチェックできるようにしていきたい。


 誰かに研究を依頼する?誰がいい?……って、こういう時にククレアがいるのか。








「『ということで、王都で川の状態をチェックできる魔道具を作ってちょ!』じゃないのよほんとに……」


 王城の中にある研究室にククレアとその侍女のティニー。


 珍しく椅子に座って考え込むククレアに、慣れた手つきで入れられたミルクたっぷりの紅茶を渡す。


「断ろうにもあんなに多額の予算を当てられちゃあ断れないわな……」


 レイに呼び出されたので何事かと行ってみたら、なかなかの難題を押し付けられ、同時に今まで少ない予算でやりくりしてきたのがままごとに見えるような多額の予算も押し付けられてしまったわけだ。


 以前に予算無限と言われたけど、正直それではこちらがやりにくいということもあって、毎回毎回予算を割り当ててもらう形式にしたわけだが、多すぎる予算も考え物だ。


「まあ、やってみるしかないわよね」


 もともとこの研究室は、この王国に対して必要なことを研究するために特別に建てられた建物なわけだから、そんな特別な研究室での初仕事としては良いものではないか。


 どうやったらよいのか見当がついていないわけではない。


 ただ、やってみないとわからないのだ。


 この世界に存在する万物には魔力が存在している。


 それは無機物有機物関係ないし、生物無生物も関係ない。


 本当にすべての物だ。


 空気にも存在するし、服に使われる布にだって存在している。


 もちろん水にも存在している。


 その魔力は含まれている物の性質によって異なる。


 細かな分類をすればキリがないが、まあ生物、個体、液体、気体というふうに分けられると考えてもらって大丈夫だ。


 ならば、液体の魔力、水の魔力に反応して王都に信号を送る魔道具を作成すればいい。


 魔石に水の魔力を覚えさせれば、水の魔力に反応する魔石を作ることができる。


 それに信号を送る魔道具を引っ付けたものを堤防であったりに設置して、水位が上昇して川の水が触れたら王都に信号を送るようにすれば、一応信号はこちらへとやってくる。


 ただ、水位の上昇による信号ではなくても、雨が降ったことによって魔石が濡れるだけで反応してしまう可能性があるのだ。


 そのため、そのままポンと置くだけでは誤動作が多発してしまい使い物にはならないだろう。


 まあ、別に少し改善すればすぐに解決できることではあるのだ。


 純粋に屋根を付ければいい。


 横殴りの雨が降った場合に濡れないよう、箱に入れるというのもいいかもしれない。


 まずは水の魔力に反応する魔石を使って作ろう。


 ……まあ、通信をどうすればいいのかわからないんですけどね。

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