第5話
先日話が始まった国民を庭に招くという話は、来週の初めにも実施される運びになり、今は人の募集を行っている。
人伝えに聞いたことだが、どうやらその応募人数が途方もない数字をたたき出しているらしく、その抽選に非常に時間がかかるとか。
なんだそれ。
「1日の時間を増やす法律を作ろうかな……」
「何言ってるんですか。早く仕事をしてください!」
「いやいやいや、さすがに仕事の量にも限度があるんです!!」
「この前は午前中に全部終わらせられたじゃないですか。」
「……あれは、違うじゃないか……」
「何が違うんですかほんとに。ほら、さっさとやっちゃってください。」
「ぶーぶー!!」
確かに本気を出せばすぐに終わる量ではある。
ただ、こんなにもたくさんの書類が机の上に積んであって、どこから手を付けていいかもわからない状態。
そんな状態で本気を出せるか?っていう話なのである。
「はぁ、そんなこと言ってても何も変わらないか……」
頭を動かさず、今は手を動かすことの方が大事だ。
「陛下、お仕事お疲れ様です。」
「ん、ありがとフィー」
そういって差し出してきた紅茶に手を伸ばす。
相変わらずフィレノアの居れるお茶はおいしい。
「今日もおいしいよ。」
「ありがとうございます。」
「でだ、フィー。僕の今日の予定はどうなっている?」
レイフォースがそう問いかけると、すぐさまポケットに入れていた手帳を取り出し、一日の予定を確認する。
フィレノアはメイドでありながらも秘書も兼ねている優秀な人物なのである。
なんなら戦うこともできるため、護衛としての任務も兼ねることがある完璧超人なのである!!
「はい。この後の予定ですが、現在時刻が12時半、次の予定が18時から行われる騎士団新歓パーティーです。ですのでそれまではフリーです。」
「騎士団新歓パーティーって、もうこんな季節なのかぁ……」
この国では毎年、春の終わりごろに騎士団の新規採用者が決定する。
基本的には国立学校の卒業者で成績が優秀なものが入ってくるのだが、別に王立学校を卒業しないといけないわけではない。
独学で自身の腕を磨き、入団試験に合格して入ってくるものもいれば、もともと貴族がそれぞれ持ってる騎士団に所属していたのをやめ、国家騎士になる者もいる。
大体が貴族ではなく、平民出身のために作られるあのフランクな雰囲気が僕は好きだ。
貴族のパーティーはどうも腹の探り合いと言った感じで好きではない。
ただ、騎士団新歓パーティーはそういうしがらみが一切なく、参加者全員が純粋にパーティーを楽しんでいるのが好きだ。
あるものは先輩に教えを請い、あるものはひたすらに食事のみに手をつけ、あるものは友を得ようと必死に駆け巡る。
あの雰囲気が好きだ。
「陛下は新歓パーティーには絶対参加しますよね。騎士団だけでなくほかのところも。」
実はこういった新歓パーティーは騎士団だけでなく、別のところでもたくさん行われているが、ほぼ全てのところに顔を出している。
王族が顔を出さないといけないという決まりはなく、先代であるレイフォースの父は一度も顔を出さなかったとか。
ただ、レイフォースは王太子の頃から毎回顔を出している。
そういう細かい積み重ねが支持率の上昇に続いているのだろうが、本人は気が付くことはない。
なぜなら、純粋に楽しみたくてパーティーに出席しているだけで、他意はないからだ。
(そう言ったところが、陛下の素晴らしいところです。)
フィレノアはこの主に使えていることを誇りに思っている。
「ん?何か用か?」
「いや、何でもありませんよ。」
「そうか。18時スタートだからそれまで仮眠を取らせてほしい。もう疲れた。」
「わかりました。では17時頃に起こしますね。」
「よろしく。」
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