第九話 邂逅(かいこう)


病院から退院した俺は今までと変わらない日々を送っていた。

だが、あそこでアブソープに敵わなかったことが今でも時々悔やまれる。


「異能が使えてもあいつにはかなわないのか。」


公園でジュース片手にたそがれる。月は煌々と照っていたが、外灯ほどではなく。深い闇を柔らかく照らしていた。


「そろそろ帰るか。」


勢いをつけて立ち上がり、自販機の横にあるゴミ箱に缶をほおりなげる。


「なぁ。今日はいい夜じゃねぇか。何飲んでたんだ?」


ある男。いや女のようにも見える人間が、ゆっくりこちらに近づいてきた。


「あんたは?」


「俺か?俺は【反発重力】(ダークエナジー)だ。

名前くらいは聞いたことあんだろ?」


「さぁ。俺は聞いたことないけどな。」


「それよりも、お前、ヒュドラっつうバケモンに憑依されてるんだってぇな。」


「なんで俺のことを?」


「見てたんだよ。お前が最近事件を起こしてる犯人と戦っていたところをなぁ。良い戦いっぷりだったじゃねぇか。まぁ仕留めきれなかったようだけどなぁ。」


「俺じゃ所詮あいつに勝てねぇ。いいところまではいくが、その先がねぇんだ。」


「その力について俺が教えてやろうか。、、、。」


「なんであんたに俺の異能が分かるんだよ。俺ですらまだ知らないことだらけなのに。」


「それはどうかな。他人の方が案外自分の知らない側面のことを知ってるってもんだ。

例えばソイツの力をお前は体に取り込むことができる。ヒュドラーには飛行能力があるから必然的にその力もお前に継承されるはずだぁ。他にもヒュドラーの筋力をお前が使うこともできるはずだ。いわゆる【増強筋肉】(マッスルゲイン)の容量だなぁ。」




「そうか。俺にはそんな隠された能力があったのか。、、、。なるほどな。」


「それに、アイツには他にも【温度操作】(サーモコントロール)も使えるみたいだったしなぁ。だから氷柱を生み出して攻撃することもできたって寸法だろうなぁ。」

(まぁ俺の力に比べたらショボい能力だがぁ。)


「まぁ、


とりあえず今日の講義はここまでだなぁ。また暇があったらこの公園で会おうぜぇ。じゃあなぁ。」







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