【3ワード企画】訳アリ高校3年生

うつりと

鍵(キー)

―今年は楽しいクリスマスの季節がやって来たぁ...

 会場は交差点だぁ...

 あそこはいい...あそこはいい...

 血生臭い派手なパーティーになりそうだな...―


イベントというのは楽しいものである。

 しかもコロナ禍に高校時代をすっぽりつぎ込まされてしまった我々、3年生にとって規制緩和のニュースは飛び上がる程の嬉しさだ。


「今日は12月24日、土曜日、日没からのクリスマスイベントについて、議論いたします」

 斜め隣の中村がクスッと自分の懐に向かって笑うと、こっちを振り返った。

「あいつ、興奮してるぜ、メガネが曇ってきてるぜ!」

 こそっと言う。

 秀才面をしている伊東は、休み時間も自分の席で勉強ばかりしているつまらない奴。それでいて実は目立ちたがり屋だ。

 顔が赤面して、その蒸気でメガネが曇ったのだろう。耳まで赤くなってきている。機関車のようにその両耳から蒸気を噴き出しそうな面をしている。

「ハーイ。

 先ずは場所から~。

 女子高が多い交差点がいいです!!」

 大場が窓際の席から叫ぶ。

「当たり前だろー!!」

 ―アハハハハハ―

「頭の軽いJKは、勘弁だぜー」

「そうそう、そこ、大切!」

 欲望の塊になった奴らが熱気を帯びてくる。

「そう簡単に言うなよ、場所は大切だよ、都心から離れた方がいい」

 伊東が口を挟む。

「いや、国立とかってのもありだけど、靖国辺りがイイ学校が揃ってるって。靖国はナンも感じないしねぇ」

 ―ソウソウ―

「ハイハイ!」

 担任が手を鳴らす。

「他にも決める事があるだろう。

 伊東、リーダーシップ執ってくれよ」

「はい、あの、衣装とか、技の方向性とか...」

 間髪入れずに入ってきたのは溝岡だ。一番後ろの席で椅子を後ろに傾けながら腕組みをして今まで眺めていた。学年一の強者だ。

「そんなの自由っしょ」

 伊東は言わなきゃ良かった的に俯く。

「いいかぁ~、俺たちは自由なんだよ!コロナなんてもんに踊らされてたのが奇怪しいんだよ。そんなもんでひもじくしてるなんて、俺たちの住む場所じゃねえ!

 先ずは俺達の存在を見せつけてやろうじゃねえか!

 3年間だ!高校時代を奪われた...目立ってやろうぜ!戦いはそれからだ!

 23年春夏のトレンドを見たか?Y2Kの再来だ...。しかし!新しくなきゃダメだ。全体はへそ出しなんかの露出系。トップスはメッシュ素材の乳首スケスケで行こう。進化系カーゴパンツはラメ素材だ。カラーはパープル。しかし!忘れるな。これはSNSでどれだけ”イイね”がもらえて『カッコイイ』って拡散されるかなんだ!!俺たちの存在をどれだけ認めさせるかなんだよ。分かるか?

 当日の見張りには下級生を付ける。そいつらにはケミカルウォッシュジーンズを着用させる。ローライズにしてやるぞ!」

 溝岡、オンライン授業で変わった?ファッションに目覚めてるよね?

「キュウレンジャー、タイヨウシシレッドには気をつけろ!太陽光を放つからな!!

 後は鍛錬のみ!!」

 レンジャー系にも目覚めたのかぁ~。

 しかし教室は溝岡に飲まれて皆、高揚している。完全に持っていかれた。

「デザインは貝塚と、おい、中村、お前達で頼む。バエる奴を頼むぜ。

 縫製は...手芸部いたな!」

 皆の目がこっちを向く。


 俺かよ~。

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【3ワード企画】訳アリ高校3年生 うつりと @hottori

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