第30話 ゴブリンを踊り食い


「ゴブリンキングはスキル《支配者の徴収》により、配下から力を吸い上げるために、配下の人数によってその能力が最大で5倍になります」

「え、5倍? え? あれ? 《頑強》さん?」


最強の《頑強》様なんじゃないの? 今まで年上だと思ってたら年下だった? 《頑強》君って呼んだ方がいい?


「《支配者の徴収》は王の名を持つ個体しかもっていないスキルであるため倍率が高めです。先ほどのゴブリンキングは1.5倍まで引き出していました。」

「なんだ、1.5倍かよ。いやそりゃそうだよな」


5倍であの能力だと俺なんでそんなに強かったんだよって話だよな。

ほどちゃん。そんな驚かせなくていいのよ。


「ちなみに5倍って配下の人数どれくらい必要なの?」

「100万です」

「理論値はめちゃくちゃ高いけど、実際には無理ですみたいな感じか」


夢のある能力だな。

ゴブリンキングは「I have a dream.」とか言って配下集めてるのかね。キングだけに。

最後暗殺されそうだ。


「いいえ。過去に15回ほどその倍率が発揮されています」

「まじかよ」

イフステージ突入していたか。


…で、何の話だっけ。


「ゴブリンキングはその能力とスキルのために基本的に決闘に勝ちます」

「さっき俺勝ちそうだったけど」

「スキル《頑強》の適応範囲は最大であるため3倍でも勝利可能です」

「なるほど?」


まぁ神級下位は伊達じゃないらしい。


「で、ゴブリンキングは基本的に決闘に勝利するけれど、下克上は仕掛けられるというわけか。」

「ゴブリンは下克上が文化ですので」

「それは身に染みてるよ」


散々仕掛けられたからな。もうこりごりだ。

あんな決闘ばかりの世界はヤンキー漫画で見る分には楽しいのだ。自分でやるのはきついよ。


「まぁ、ゴブリンキングが強くても俺なら勝てるから何の問題ない」


とりあえず、ゴブリンキングを尾行してどこかしらで一万人以上になるまで待とう。

今思えば俺も最初からこうしておけばよかったんだな。


下手にゴブリンを育てるとかそういうんじゃなくて、配下に餓死などの犠牲を出しながらでも無理やり一万人以上にもっていくスタイル。

…元人間だとさすがに思いつかなかったな。ゴブリンのように修羅というか、無関心にならねば思いつかない。





ゴブリンキングを尾行するのはそれほど難しくなかった。あれだけの人数がいれば大量の足跡が残るし、ゲキャゲキャ騒ぎながら移動しているので楽だ。


ちょっと距離を離せばあいつらも気づかないし、というか後ろを見るなんてことほとんどしないし。


…あいつらさっきまでの拠点のことなんてすぐに忘れてやがるな。この野郎ども。


まぁいいか。もうすでにあいつらは手段だ。忘れよう。


それであいつらめちゃくちゃ騒ぐものだから敵もおびき寄せるのだが、さすがにあれだけの人数がいれば何とかなるだろう。


と、思っていたのだが…。


「さっきからめちゃくちゃ襲われてるし、めっちゃ死んでるな」


よくわからないのに何度も襲われているわ。


毎度のダンガールボアはもちろん、グリフォン、ゾンビホーネット、グルメオークと、他にもあるが次々とゴブリンを襲ってくる。

ダンガールボアはともかく、他の奴らは自分の取り分を取れればまともに戦わずにすぐに離れるので、ゴブリン達は襲われるたびに数を減らしていく。


それでもゴブリンキングは気にせずに歩き続けている。いちいち構っていられないのか、日常茶飯事なのか。


ゴブリンキング自身が襲われることがあまりないというのもある。周辺雑魚ゴブリンで固められてるしな。


「というか、グルメオークって何?」


美食家ってこと?


「オークは基本雑食ですが、一つしか食べれなくなるオークがグルメオークです。今回の場合はゴブリンしか食べないオークです。」


「それグルメじゃなくて偏食なのでは?」


だがそんなふざけた名前にもかかわらず、グルメオークは太った体を器用にに動かしてゴブリンを生きたままさらっていった。動けるデブだな。


「何で生きたまま?」


「グルメオークは個体ごとに好きな叫び声があります」


「あ、そういうこと…」


お家でゴブリンを踊り食いでもしてるんだろうか。今日は焼きゴブリンの踊り食いよって一家団欒の光景が目に浮かぶ。






「しかし、さすがに襲われすぎだな…」


またゴブリン達が襲われている。今度はコマドリみたいな鳥のピアッシングハートとかいう魔物が集団でゴブリンを襲っていた。


勢いよく飛んできてゴブリンの体を貫いては離れていっている。

残されたゴブリンはどんどんとついばまれて骨が見えてくるというような状況だ。ゾンビ見たくも見える。


空中のピラニアかな?


今までゴブリンキング達は2回ほど拠点をめぐってそこのゴブリンを吸収して数を増やしているが、移動中に敵に襲われてそれなりの数の死亡も出ているので、元の数よりも2,3割は減ってるんじゃないだろうか?


「そのための護衛役か。ゴブリンがゴブリン守っても結局犠牲出るものな」


俺がフォグスパイダー倒しちゃったもんな。だから減っているのか。


あんな奴ら守るの癪だが、どうせだし経験値集めに俺が狩るか。どれも見ている限り狩れそうだし、試したいスキルもあるしな。



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