復活
〔青〕
私の目の前で,純人が目を閉じている。いくら声をかけても,反応がなかった。担当した医師が立ち上がる。
「最善は尽くしましたので,後は本人しだいです。何かあったら,すぐに呼んでください。」
医師や,看護師が異常なくらいに無機質で,機械なのではないか,と疑いたくなるほどだった。病院の壁が潔癖を思わせる白で,気分を陰鬱にさせる薬品の匂いが強かったこともあるかもしれない。
医師たちが出ていく。もう一度純人の方を見る。純人と出会ったのは,スーパーだった。
昔,スーパーでアルバイトをしていたとき,ジュースの原液だけを週に一回買いにくる客がいた。それが純人だった。ある日,働いているところではないスーパーに,偶然行った。そこで,ジュースの原液を手に取る純人を見かけた。なんだか可笑しくなり,
「それ,いつも買ってますよね。」
と思わず話しかけた。
それから,色々とあって,付き合うことになり,同棲することになり,結婚にまでいった。幸せな日々だった。視界が歪み,涙が頰を伝っていく。
「なあに泣いてんの?」
純人の声がした。幻聴だと思ったが,そうではないらしい。純人が目を開けていた。ナースコールに手を伸ばすと,「やめてやめて,できればバレたくないから,」
と制した。
「わた,」と言いかけ,はっとする。なかったことにし,もう一度言う。
「僕,結構心配したんだけど。」
「ごめんね」
突然,「自心」と言う言葉を思い出した。
「自心に苦悩があるときは,ちゃんと話してよ。」
純人は静かに笑い,話し始める。その笑った顔がが一瞬,碧生と重なった。
「さっきの仕事でさ,」
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