蒼威

〔蒼〕

 あいつは今コンビニに行っている。僕はコンビニに行くまでの近道を知っていた。

 普通は家を出て言うなれば大きくCの形で行くことになるが、所有者不明の、小さな庭のような所を通ればさながらIの形で行ける。

 立ち入り禁止の看板と共に黄色と黒のロープをくぐる。そのまま突っ切ってコンビニから少し離れた所で待ち伏せする。

 計画の再確認をした所で、急に自分にかかる重力が強くなった気がした。何が起こった?足は挫いてしまった。視界は夜のせいで暗く、しばらく経ってから自分は落とし穴に落ちたのだと気がついた。

 ポケットの中にスマホがあることを思い出し、ライト機能で辺りを探る。

 目を凝らすと、穴はギリースーツで隠されていたらしいということがわかった。

 周りを手探ると、僕に踏まれて潰された紙飛行機があった。そこには、“ギリースーツの下”と書かれていた。

 探すと、スーツの下にレコーダーのようなものがあった。再生ボタンを押す。雑音と共に、何か聞こえた。

 


「なああお、ゼラ。落とし穴のいい所ってなんだと思う?」

「今ナチュラルに間違えたでしょ。考案者さん?」

「誰にだって間違いはあるだろ?そんなことよりどう思うよ、落とし穴のいいところ」

「えー!落とし穴のいい所かぁ。掘るのを半強制的に手伝わされる所とか?」

「それはな、」


 そこで音声が途切れた。

 いつのだろう?碧生の声がしたから数ヶ月以上前の?現状を整理していると,誰かの足音がした。

「やぁ」葵の声だった。

「よかったぁ。引っかかってくれないとこの計画全部パーっぽいから」

「イグサ姉さんは?」

「イグサはこっちの側になってるよ。」

 よく見ると、まさに“恐る恐る”という雰囲気を満遍と余す所なく醸し出し、青藺が佇んでいた。いつからだろう?こちらの気持ちに答えるように、青藺が話し始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る