第7話 豪を連れ出せ!
ミャー子「ということでフリーゲ入って毎日新鮮で楽しいんだニャ~」
平日の夜にミャー子はヴィーチューブで雑談配信をしていた。
コメント「あの新人はどんな感じですか?」
ミャー子「新人・・・・・・カイくんのことかニャ?フリーゲ史上初めてのことだよね。外部からの突然入部・・・・・・?」
コメント「外部からの突然入部ってマ!?」
ミャー子「これ以上は秘密だからし~ニャ!!」
コメント「話変わるけどアニマルファイター優勝おめでとう!」
と1万円のゴールドチャットのコメントを出していた。
ミャー子「ゴールドチャットありがとニャ~!!そうそうまさか優勝できるとは思っていなくて~」
コメント「豪樹が負けて暴れた時は放送事故かと思った・・・・・・」
コメント「そうそう、それでまさか伝説のゲーマー「犬氏」が出てきてさ。」
コメント「最初ニセモノかと思ったけどあの腕前で豪樹を完膚なきまで叩きのめしてさ。さらに犬氏がゲーム復帰するって聞いて俺は興奮したね!!」
ミャー子「分かる、まさかあの瞬間犬氏が来るとは思わなかった。あの人はミャー子のピンチを救った王子様よ~」
コメント「なに!?」
コメント「まさかミャー子惚れてるんじゃ・・・・・・」
ミャー子「な~んてね。みんなの方が好きだから安心してニャン♡」
コメント「あざとカワヨ~」
コメント「普通の人ならムカつくけどミャー子なら許せる。」
ミャー子「じゃあそろそろいい時間だし配信切るね~おつにゃんこ~」
ミャー子はそのまま配信を切った。ちゃんと切ったことを確認するとベッドに横になった。
都「つがれだ~」
ミャー子から都に戻った彼女はそのまま眠ってしまった。
次の日、隣の部屋の改が靴を履いて学校に向かおうとしていた。
改「・・・・・・アイツ昨日も配信していたし、まさかまだ寝ているんじゃ・・・・・・」
改は深いため息をついた。都を起こすためにインターホンを押した。
改「猫柳、俺だ犬神だ。早くしないと学校遅れるぞ。」
インターホンのスピーカーから何の声も聞こえてこない。
改「猫柳・・・・・・?」
数秒後扉の奥から物音がした。ゴソゴソではなくドンガラガッシャーン!!と急いで起きて準備しているような音が聞こえた。ドアが開いたとき制服姿の都が出てきた。
都「もしかして遅刻!?早く行かなきゃ!!」
改「いや、歩いても十分間に合う時間だけど・・・・・・」
都「え・・・・・・なんだ・・・・・・もう一睡しよ・・・・・・。」
都が扉を閉めようとすると改は足をかけて扉を閉めるのを防いだ。
改「いつもギリギリ遅刻しようとして桐谷先生に怒られているだろうが!!いいから行くぞ!!」
都「いやや~!!アタシもうちょっと寝てるんだ~!!」
改「配信者だからって怠けた生活するんじゃねえぞ!!」
都「鬼~悪魔~社畜~!!」
改「誰が社畜だ!!」
そんな争いをしていたらいつの間にか時間が経ち、結局2人とも遅刻ギリギリで登校してしまった。
桐谷先生「猫柳!!またギリギリ登校か!!」
寅好先生「それにしても犬神もギリギリ遅刻とか珍しいな。」
改「す・・・・・・すいません(猫柳のこと無視してれば余裕で間に合っていたのに・・・・・・)」
桐谷先生のお説教が終わり席に戻ると水鳥にからかわれた。
水鳥「まさかお前が遅刻とは、しかも遅刻魔の猫柳さんとだろ~仲いいんだな。」
改「たっ・・・・・・たまたまだよバーカ!!」
寅好先生「そうだ、犬神と猫柳。放課後職員室に来てくれ。」
改「え・・・・・・。」
改の顔が青ざめた。
水鳥「そこまで問題なのか・・・・・・ドンマイ改。」
そんな中、都は机に突っ伏してスースーいびきをかいて寝ていた。
放課後、改と都は職員室へ向かった。都はその時話を聞いていなかったので改に言われて一緒に来た。
寅好先生「お、来たか。」
寅好先生はいつも通りニコニコしていた。
改「もしかして反省文書かされる感じですか?」
寅好先生「そんなんじゃないって、それに遅刻したわけではないしね。」
寅好先生の眼光が開いた。
寅好先生「猿渡の事なんだ。」
改・都「!!」
寅好先生「アイツあの大会以来学校に来ていないんだよ。このままいくと留年の可能性が出てくるんだよ。」
改「留年・・・・・・このままやめるってことも」
寅好先生「考えられるな。やめられてしまうと顧問としてもフリーゲのためにも困ってしまうからな。」
改「でも、私たちにどうしろと?」
寅好先生「猿渡を学校に来るよう言っておいてくれないか。」
改「・・・・・・無茶なこと言いますよね。猿渡が問題児だってわかっていたことでしょう。」
寅好先生「・・・・・・たしかにそう思わなくても仕方ないところですよね。だから私は反対したのに・・・・・・」
改「反対?」
寅好先生「いえ、こちらの話です。みなさんは同期なんですしあとはよろしくお願いしますね。」
と寅好先生は豪の家の住所の書かれたメモを渡された。改と都はメモの通りに豪の赤い屋根の一軒家についた。
改「ここか、アイツの家は。」
改はチャイムを押した。しばらくしてドアが開きオレンジ色の癖っ毛ロングの豪の母が現れた。
豪の母「はいどちら様ですか?」
改「あ、初めまして干支珠高校の犬神改と申します。こちらが同じクラスの猫柳都です。それで豪くんはどちらに・・・・・・」
豪の母はじーっと改の顔を見ていた。心なしか瞳が少し潤んでいるように見えた。
豪の母「あら、ごめんなさいね。 豪ね。今部屋にこもっているわ。」
2人は豪の母に家に上げてもらいそのまま豪の部屋に案内してもらった。
豪の母「豪!!お友達が来たわよ!」
扉の奥から豪の荒げた声が聞こえた。
豪「は!?なんで上げてんだよ!さっさと帰らせろ!」
豪の母「ちょっと、アンタなんてひどいこと言うのよ!!」
豪「おふくろには関係ねぇことだろ!」
豪の母「関係ないわけないでしょう!」
改「あの、僕らまた日を改めて来ますけど・・・・・・」
豪の母「でも、2人に悪いわ。」
都はドアの向こうにいる豪に聞こえるようにこう言った。
都「犬神くん。帰ろう。どうせまともに言っても聞いてくれないし、あんな弱虫放っておこう。」
改「おい、いくらなんでも言いすぎだろ・・・・・・」
都「別にアタシは猿渡がいようがいまいが関係ないしね。先生からは逃げましたって報告しとこうかな。」
都が帰ろうとしたその時、豪の部屋のドアが勢いよく開いた。ドアを開けた豪が鬼気迫る表情をしていた。
豪「てめぇ・・・・・・逃げただ弱虫だの好き放題言いやがって。」
都「あら、ほんとうの事じゃないかしら。」
豪「この女・・・・・・殺す!」
豪が拳を振り上げ都に殴りかかろうとした。
改「まずい!!」
改が豪の拳を受け止めようとしたその時。
豪「!?」
横からの右ストレートをもろにくらい倒れた。豪の母が握りこぶしを豪に向けていた。
豪の母「女に手を上げるなんてそんな教育をした覚えはないわ!」
豪「ぐっ・・・・・・」
豪の母「猫柳さんに謝りなさい。」
都「謝らなくてもいいですよ。その代わり猿渡くんと話をさせてもらえないですか?」
豪の母「でも、そうなるとまた豪が手を出してしまうかも・・・・・・」
改「その時は僕が止めに入るのでご安心ください。」
豪の母は少し考えていたが、静かに頷いた。
豪の母「分かりました。あなたたちに任せます。」
改と都が部屋に入った。部屋の中は配信用の機材やゲーム機が多数置いてあった。
改と都は座る場所がないためベッドに座った。豪は自分のゲーミングチェアに腰かけた。
豪「で、俺に何の用だよ。」
改「寅好先生に頼まれてお前に学校来るように言われているんだよ。」
豪「は?そんなことのためにわざわざウチに来たのかよ。別に俺が学校行こうが行かまいがお前には関係ねえだろ。」
改「お前が辞めることによって学校に迷惑かかるんだよ。」
豪「別に俺が戻って何か変わるわけねえだろ。火に油を注ぐだけだよ。」
都「確かにそうかもね~あの事件以降チャンネル登録者が減少しているし、今戻ったとしても何も変わらない。」
改「おい猫柳・・・・・・」
都「正直ガッカリだわ。あんなに煽っておいていざ自分が負けた時は逃げるんだね。」
改「またお前はそういうことを・・・・・・」
豪「ぐっ・・・・・・」
豪の腕が怒りのあまり震えていた。その後、静かに状況を話した。
豪「俺にとって犬氏は憧れだったんだよ。圧倒的に強いゲームセンス。どんなプレイヤーをも叩き潰せるその力がうらやましかった。でもそんな犬氏はある日を境に現れなくなった。」
改「・・・・・・・・・。」
改は申し訳なさそうにうつむいた。
豪「勝手に消えやがって・・・・・・犬氏も親父も・・・・・・」
都「親父?なんでそこで親父さんが出てくるの?」
豪「親父は・・・・・・仕事に行く途中に交通事故に巻き込まれて死んだ。」
都「そんな過去が・・・・・・」
豪「しかもその顔が犬神に似てんだよ。」
改「え、俺に?」
都「そういえば猿渡のお母さん、犬神くんの顔見てちょっと涙ぐんでいたわね。」
豪「だからお前が余計に腹が立つ。」
改「理不尽極まりないな・・・・・・」
改は深呼吸をした。
改「猿渡、一つ言っておくことがある。俺、ゲーム部に入ることになったから。」
豪「は!?」
改「気に入らないか?でも俺もお前のゲームプレイは気に入らない。どっちもどっちってわけだな。」
豪「てめえぽっと出がしゃしゃり出るじゃねえぞ・・・・・・」
改「なら一つ勝負しないか?ゲームは「アニマルファイター」で。」
豪「何でお前とやらなくちゃなんねえんだよ。」
改「もしかして負けるのが怖いのか?」
豪「誰が負けるのが怖いって?てめえみたいな雑魚、速攻潰してやるよ!」
改「もし勝ったら負けたやつに一つ言うこと聞くでいいな。」
豪「勝てるとでも思ってんのか?」
改「悪いけど今のお前には負ける気がしないんでね。」
豪はゲーム機を取り出しリモコンを改に渡した。豪はいつも通りキャラクターは猿武を使用。改はエレファスを使用した。
豪「エレファスだと?」
改「一応猫柳に勝ったから腕は保証するよ。」
ゲームが始まった。豪はお得意の先制攻撃を繰り出していた。改は冷静に攻撃をガードしていた。
改「(変わっていないな、今までと同じ攻撃。)」
改は猿武が攻撃しているところをガードしつつ攻撃を当て続けた。猿武のHPがどんどん削っていく。
豪「(ふざけんな!こんなよく分かんない奴に負けるとか。)」
豪は結局このラウンドを落としてしまった。
改「このままだとお前負けるぞ。」
豪「煽りのつもりか!」
改「プレイが今のお前そのものだな。」
豪「あ!?」
改「単調な攻撃ばかり。積極的なのは認めるが対策されたら対策で返さないと同じ過ちを繰り返すぞ。」
豪「黙れ!」
改「このラウンドで見せてやるよ。俺がお前を叩きのめす。」
第2ラウンド改が攻撃を仕掛けた。しかもノーガードで突っ込んできた。
豪「!?」
豪は思わず守りに徹してしまった。しかし一撃の重いエレファスの猛攻を崩すことができぬまま倒されてしまった。
改「今の攻撃、ただ攻撃をむやみに繰り返したわけではないぞ。いかに攻撃を食らわずにコマンドを選んだんだ。」
豪「ぐっ・・・・・・」
改「さて、俺が勝ったわけだし一つ言うことを聞いてもらうか。」
豪「・・・・・・いいぜ。男に二言はない。」
改「フリーゲに戻ってきてくれ。」
豪は思わず目を真ん丸にしていた。
豪「そんなことのためにわざわざゲームしたのかよ!?」
改「だってそのためにお前の家まで来たんだから。」
豪「馬鹿なヤツ・・・・・・」
改「それにお前にはゲームセンスがあるんだから。」
豪「は!?」
改「普段から練習しているのはプレイをしていてわかる。でも今のやり方だとせっかくの才が台無しだ。それに人を煽る行為はゲーマー失格だ。そんな奴に成長はない。相手を尊重し、その経験を次に生かすのが本当のゲーマーだと俺は思う。」
改は握手をするために右手を差し出した。
改「一緒にやろうぜ。同じフリーゲの同期だろ。」
豪はそっぽを向いた。
豪「けっ、説教なんて聞きたかねえよ。でも・・・・・・」
豪は握手に応じた。
豪「これは賭けだからな。だからお前に従う。でも勘違いするなよ。次は絶対に俺が勝ってやるかんな!!」
こうして豪をフリーゲに戻すことに成功したのである。
都「アタシは別に猿渡がいようがいまいがどっちでもいいけどね~」
改「ここにも教育が必要な奴がいたな・・・・・・」
でも都と豪の溝はまだまだ埋まるには難しいようだ。
第7話(完)
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