第4話 悲しくて涙を流せる人間

因縁の3人からの嫌がらせには自分なりの正当防衛理論を用いて応戦した。


あくまで自分的ルールでしかない。

どんな理由があれ他人を傷つけてはいけないのかもしれない。


しかし応戦は案外理にかなっているようで、新たな嫌がらせへの抑止にもなる。やられっぱなしで見す見す死ぬだけではこの世を強く生き残ることは出来ない。


前世で私は焼き殺されている。

現世も同じ人間が私をこの世から抹殺しようとしている。


私は無宗教で例えばキリストの教えも信じない。左の頬を殴られたら右の頬を差し出す、私の今はそんな状況ではない。


私の直感が応戦しろ、反撃しろと促す。

それしか生き残る道はないと瞬時に感じるのだから、理屈を並べている暇は無かった。


しかし、なんびとも他者を傷つけたり殺める権利はないだろう。複雑な世の中で明確な正否はなくとも道徳的な人の世のルールは在る。


私の応戦は暴力行為であるから暴力はよくないと止める人が多数いた。私に暴力をふるってくる人も増えた。


正当防衛の理屈が通らないことは本当に悔しかった。


私の理不尽さに共感してくれる人もいたが、私の方が暴力魔のように扱われる悲しさを経験した。


そして思う。


悲しくて涙を流せる人間という動物の社会は難解、複雑でありながら出来るだけ他者に優しくあってほしい。一個人の私の願い。


集団の意識は一個人の意識の集合体だから、たった一個人の私的な思いであっても切に願っていよう。私的な思いは宇宙の元素だと思う。





彼は私がかわいくてたまらない。彼が私を愛する理由は、高尚な精神性を説いたようなものではない。至極直感的。


タレントのような卓越した美しさも持たない私に度々欲情する。


私が彼に求愛めいた信号を発すると彼のリビドーは点滅する。


なにがしか魅力的で彼を欲情させるに充分な女性は多分世の中に五万といる。


私は常に彼の性欲について心配を抱えている。


他の人は絶対に抱かないで。


絶対に、


何故かとても強く思っていた。

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