証言14 開戦直後・開戦直前(証言者:鞭の天才INA)

 脳に直接送られた公式メッセージを、すぐに消化出来なかった。

 フェイタル・クエスト……? プレイヤー全体で戦うイベント……?

 負ければ、サービスが終了する……この世界が、消える?

 あたしが【鞭の天才】として君臨していた、この世界が、消える!?

 ……フェイタル・クエストの存在くらいは知っていた。

 要は、収益の落ち込んだタイトルに対するテコ入れ、あるいはメーカー側の断捨離。

 プレイヤー全員の尻に火をつけて“世界を懸けた戦い”を制したなら、ゲームの業績を盛り返すカンフル剤となる。

 一方、失敗したならしたで、ゲームが潰れる前にもう一花、経済の大輪を咲かせられる。

 それが、まさか、この世界にまで及ぶとは。

 もしこの世界が無くなったら、あたしは、

「なあ、INAイナ……? その、気にさわったら謝るけどさ、オレ達ももう、こんなことしてる場合じゃーー」

「うるさいッ!」

 おずおず進言しようとしたバズに、あたしは鋭く怒鳴り返していた。

 そして。

 あたしは、何故だかHARUTOハルトを改めて睨み付けていた。

 ーーここまで匿ってくれて、助かった。

 何それ。

 皮肉……では無いだろう。

 さりとて、心からの感謝と言う事もあり得ない。

 この男の事だ。

 あるがまま、事実を淡々と述べているのかも知れない。

 そして、この余裕には根拠があるのは間違いないだろう。

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