第265話 番外編 きちゅねしゃん 1
「おばばしゃまー! 来たじょー!」
「ハル! よく来たね!」
ハルは長老達やいつものメンバーとアヴィー先生も一緒にドラゴシオン王国に来ている。早速、おばば様に会いにきたハル達。また、紅龍王に乗ってだ。紅龍王の背中から手をブンブンと振りながら叫んでいたハル。
「ホンロン! 何してんだい! 早く降りといで!」
文句を言われる紅龍王。わざわざ送って来たのに立場がない。
紅龍王が降りると、その背中から飛び降りるように降りてきたハルは、そのままの勢いでおばば様に抱き着いた。
「よく来たね、ハル。元気だったかい?」
「おばばしゃま、元気ら! こんろはゆっくりれきるじょ」
「そうかい、そうかい」
「おばば様、お世話になります」
「ああ、遠慮はなしだよ。さ、皆入りな。ホンロンいつまで龍のままでいるんだい。早く入りな!」
また、叱られている。おばば様にかかると龍王でも形無しだ。
ここ、ドラゴシオン王国の中層にあるおばば様の家は、周りに木々や植物が多い。それに、おばば様自身でも薬草や野菜を育てている。必然的に精霊達も多くいる。
「ぶひゃひゃひゃ!」
「ハル、何だその笑い方は?」
「じーちゃん、いきなり精霊に囲まれて前が見えねー」
「おばば様の家は精霊が多いのでしょう?」
「ばーちゃん、しょうなんら。ん? なんらって?」
「ハルちゃん、どうしたの?」
「ん、精霊がたしゅけてやってほしいって言ってりゅ」
「助ける?」
「こはりゅ、しゅしゅ、分かりゅか?」
「はいなのれす!」
「え、あたし分かんないわ」
「シュシュはまだまだなのれす!」
「コハル先輩には敵わないわよ〜」
「こはりゅ、何なんら?」
「弱っているなのれす。こっちなのれす」
コハルがフヨフヨと空中を移動する。おばば様の家の畑を抜けて木々のある方へ。
その草むらからモフモフとした尻尾が半分見えていた。
「キュゥ……」
「え、なんら?」
「ハル、狐じゃねーか?」
リヒトが言う様に、半分見えていた尻尾の先には小さな狐が横たわっていた。全身真っ白だ。
「りひと、きちゅね? けろ真っ白白らじょ。尻尾がいっぱいらじょ?」
「聖獣なのれす! 白狐なのれす!」
ハルが戸惑っているが、その小さな白い狐の尻尾は8本あった。9尾ではなく8尾だ。
「やだ、また聖獣? ハルちゃん引き寄せてるんじゃない?」
「え、しょう?」
「そうかもな。ハルは好かれるからな」
「じーちゃん、しょう? けろ、震えてりゅじょ」
「弱っているなのれす」
「しょっか。こはりゅ、ひーりゅしていいか?」
「少しずつなのれす」
「ん、ひーりゅ」
狐の身体がペカ〜ッと光った。
「キュ、キュゥ!」
顔を上げ覗き込んでいるハル達を見て驚いている様だ。
「きちゅねしゃん、らいじょぶら。なんもしねーよ」
ハルちゃんが、小さなプクプクとした手を出すと、狐はクンクンと匂いを嗅いでいたが頭をハルの手に擦り付ける様に寄ってきた。
「アハハ、かぁわいいなぁ」
ハルは狐をナデナデする。
「ハル、取り敢えずおばば様の家に入るか? まだ全快ではないのだろう?」
「ん、じーちゃん。しょうしゅる」
ハルがそっと抱き上げた。超モフモフだ。特に8尾ある尻尾が。
「おー、マジで尻尾が8尾あるじゃん」
「だから、普通の狐じゃないなのれす! 聖獣なのれす!」
「おう、コハル。小さいけど、もしかして格が高いのか? 尻尾が8尾もあるんだから」
「そうなのれす! あとちょっとで天狐なのれす」
「コハル先輩、天狐なの!?」
「そうなのれす! シュシュよりずっと生きてるなのれす!」
ほぉ〜! 見かけは子狐なのだが、シュシュより長く生きているそうだ。あと少しで天狐と言う事は、1000年近く生きている事になる。狐は1000年生きた聖獣が天狐となる。普通の聖獣より格は上になる。
しかし、ハルちゃん。抱っこしてご満悦だね。
「ふふん。かぁわいい〜」
小さな手で仕切りに撫でている。
「ハルちゃん、可愛いの?」
「ん、しゅしゅ。超かあいい」
「ショックだわ……」
何がだ。デカイ虎のシュシュよ。
「しゅしゅもかあいいじょ」
「ついでに言わなくていいわよ、ハルちゃん」
「ん、かあいいじょ」
今度はシュシュを撫でるハル。ハルちゃん、大変だね。
「けろ、モフモフがちげー」
「え……」
あらら、言っちゃったよ。どうやら、シュシュと子狐とでは、モフモフ加減が違うらしい。
「おやまあ、何を拾ってきたんだい?」
「おばば様、きちゅねしゃんら」
「ほう、8尾じゃないか。もう直ぐ天狐かい?」
「そうなのれす!」
さすが、おばば様。よく知っている。
「体毛が白だからね。北の山に住む狐だろうよ。寒い地域にしかいないんだ。しかし、8尾とは珍しいね」
皆で家の中へと入っていく。
「ちょっときちゃねーかりゃな。くりーん」
ハルが狐をクリーンすると、より白が映えた。本当に全身真っ白だ。
「めちゃ、真っ白白ら。きりぇいらな」
「ねえ、ハルちゃん。どう違うの? あたしのモフモフとどう違うの?」
「ん、しゅしゅは、モフモフじゃなくてしゃりゃしゃりゃら。けろ、きちゅねしゃんは超モフモフら」
シュシュが何故か肩を落として落ち込んでいる。毛の種類が違うのだろうよ。
「シュシュは綺麗らじょ。ベルベットみたいら。なめりゃかれ、柔りゃかい」
「本当? あたしも触りたくなる?」
「ん、乗りたくなりゅ」
「それはまた違うわよ!」
「え、しょお?」
「ハル、また少しヒールなのれす」
「ん、ひーりゅ」
すると、パッチリと目を開けた。抱っこしているハルをじっと見ている。
「ん? らいじょぶらからな」
「キュゥ……」
と、また寝てしまった。
「弱っているんだね? 狼にでも追いかけられたのかね」
「おばば様、狼もいるのか?」
「何言ってんだい。山に入れば狐や狼も熊だっているよ。ハルの好きなヒュージラビットもいるさ」
「おお! うしゃぎ!」
「そうだよ。ウサギ肉のソテーを仕込んでおいたからね。ルシカ、頼むよ」
「はい、おばば様」
「ルシカ兄さん、手伝うわ」
ルシカとカエデが台所に入って行った。どこにいても、ルシカは飯担当だ。
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