第251話 4層では?

「感動です! 5人共凄くカッコいい!」

「あら、ニーク。そんなにかしら?」

「アヴィー先生は皆教え子なんでしょう?」

「そうよ。みんなやんちゃ坊主で手を焼いたわ」

「そうなんだ!?」

「まだまだ若造よ」

「アヴィー先生、一体何歳……」

「ニーク、何かしら? 今、何を聞こうとしたのかしら?」


 お、アヴィー先生の目が怖いぞぅ。


「いえ、何でもありません」

「そう? ならいいのよ」


 アヴィー先生に睨まれてしまうと、ニークも強く出られない。アヴィー先生には誰も敵わない。


「りゅしかー! もう食ってもいいかー?」

「ハル、もう少し待って下さい」

「しゃーねー」

「食べるなのれす」

「こはりゅ、まらら」

「はいなのれす」

「お、コハルだ」

「はいなのれす」

「コハルは聖獣の中でも偉いんだってな?」

「はいなのれす!」

「え? ノルテ、そうなのか?」

「なんだ、シアル。知らないのか? コハルは神使なんだぞ」

「そうなのか?」

「そうなのれす!」


 また、コハルが小さな胸を張って自慢気だ。


「だから、シュシュより先輩なんだよな」

「はいなのれす! シュシュはまだピヨピヨなのれす!」

「コハル先輩ったら、また言ってるわ。ほんと、ピヨピヨはやめて欲しい」


 シュシュがハルの足元に伏せてぼやいている。ピヨピヨとは言われたくないのだろう。


「なんら、しゅしゅ嫌なのか?」

「だって、ハルちゃん。600歳過ぎた虎にピヨピヨって……ねえ」

「しょうか? かぁいいじょ」

「あら、そう?」

「ん、かぁいい」

「んふふ。ならいいわ」

「お待たせしました。さあ、皆さん。食べましょう」

「やっちゃ。いたらきぃ」


 ハルが誰よりも早く、あーんとお口を開けて食べる。


「んまい! やっぱりゅしかの飯は1番ら!」

「アハハハ! ちびっ子がいると賑やかでいいな」

「のりゅてしゃん、美味いじょ!」

「ああ。ハル、沢山食べるんだぞ」

「あい!」


 ほっぺを膨らませてモグモグと美味しそうに食べるハル。


「しかし、どうなってんだ? いつの間に4層に入ったんだ?」

「瞬間移動で通り過ぎたのかなぁ?」

「ソニル、瞬間移動ごときで俺達の目は誤魔化せないだろうが」

「そうなんだよねぇ」

「ルシカ、この肉美味いな」

「しありゅしゃん、しょれはうしゃぎら」

「ウサギか? ハル、よく知っているな」

「ドラゴシオンで討伐したヒュージラビットの肉なんです。ハルの好物なんですよ」

「ん、らいしゅきら」

「ハル、ほっぺについてますよ」

「ん……」


 いつものように、ルシカがハルのほっぺを拭く。それにしても、話が飛びまくっている。


「ヒュージラビットか。なかなか食べられる肉じゃないぞ。大森林にはいないんだ」

「しょう?」

「そうだな。あいつらに大森林は暑すぎるんだろう。比較的寒いところに生息しているんだ」

「おお」

「で、長老どうする? 食べたらアンデッド倒しに行くだろう?」

「リレイ、そうだな。仕方あるまい」

「また、倒し方を教えないとな」

「リヒトに教えられんのか?」

「ノルテ! 当たり前じゃねーか!」

「普通さぁ、どうやったら効率的に倒せるかなぁ? て、考えない? ヒューマンって、ちょっと出来なかったら直ぐに諦めちゃうよね?」

「ソニル、そりゃ命が掛かってんだ。慎重にもなるだろうよ」

「何言ってんの、ノルテ。あれはさぁ、慎重って言わないよ?」

「ソニルが言うのも分かるな。俺もそう思う」

「ね、シアル。そうだよねー」

「まあ、とにかくだ。倒し方を教えながら浄化してくれ」

「はぁーい」

「了解だ」


 人数が多過ぎる。誰が何を言っているのか分からない。


「ハルちゃんはお留守番ね」

「え? ばーちゃん、おりぇも出りゅじょ」

「これだけいればハルちゃんが出る事ないわ」

「ええー」


 ハルちゃん、やる気だったらしい。食べたら眠くなるのに。


「どうせ、ハルは眠くなるでしょう?」

「みーりぇ! おりぇはらいじょぶら!」

「ハル、今日はお留守番しましょうね。また明日の昼間に行きましょう」

「ん……ばーちゃん、分かっちゃ」

「4層を5つのブロックに分けよう。先ず、ヒューマン達に倒し方を教える。それからある程度アンデッドを浄化してくれ。その後、墓地を探して魔石の浄化だ」

「6層や5層だと木の下に埋めてあったが、俺達がそれを見つけて浄化しているのを見られているんだよな? だったら4層だと別の場所に埋めているかもな」

「うん、僕もそう思う。シアル、良いとこに気がついたね」

「お前に言われたくねーよ」

「ひどーい! リヒト、何とか言って!」

「もう相変わらずウゼー」

「リヒト、酷いよ! 冷たいぃー!」

「おりぇも行きたかったなぁ」

「ハルちゃん、これだけ最強のエルフがいたら楽勝よ」

「しょうらな」

「あたしと一緒に寝ましょうね」

「ん」


 その日はハルはお留守番。ミーレが言っていた様に、食べたら早々に眠くなったハルはしっかりシュシュと一緒に熟睡していた。

 ハルちゃんがスヤスヤと寝ている間に5人と長老達は、4層のアンデッド討伐に出ていた。

 今までと同じ様に、傷ついたヒューマン達を回復させ、ポーションを配り、アンデッドの倒し方を教えていた。夜になると、何処からともなく現れるアンデッド。

 それを、浄化である程度倒し、そして皆は魔石を探す。シアルの予想通りに、墓地の木の下には魔石が無かった。


「やっぱ、僕達を見て警戒しているんだよ」

「ソニル様、魔石を探して下さい」

「コニー、分かってるって」


 其々が墓地で魔石を探す。魔石には強烈な闇の魔法が込められている。それを辿り魔石を見つけるのだ。ある墓地では、丁度中央に埋められている魔石を発見した。他の墓地では、角に埋められていたり、墓地に入ってすぐの何もない場所に埋められていたりと4箇所すべて違う場所から魔石を発見した。

 しかし、どうやら墓地からは離れられないらしい。なんせ、アンデッドだ。元はと言えば、墓地に出現する魔物だ。墓地を起点にアンデッドを呼び出す。そのまま放っておけば、勝手にアンデッドは街へと移動して行く。魔石を作成し埋めた本人がその場にいなくても、アンデッドはヒューマン達を襲う。

 一種の呪いと同じだ。事実、恨みがあるのだろう。2000年もの長い間、持ち続けた恨みだ。想像もつかない。

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