第249話 同一人物

「なるほどね。ハイヒューマンかぁ」


 リヒトから説明をされ、何故かあっさりと納得しているソニル。


「ソニル、納得なのか?」

「え? だってリヒト。僕達に気付かれずに見張るなんてヒューマンには出来ないじゃん。状況を見ても、ハイヒューマンなら納得だよ」

「そうか、それもそうだな」

「リヒト、しっかりしなよー。それ位考えなくても分かるよ?」

「分かってるってーの!」

「分かってなかったじゃん。ね、ハルちゃ〜ん! ねえ、シュシュ。モフらせてよ!」

「何よ。あたしのもふもふは高いわよ」

「えぇ〜! ツンデレさんなのぉ〜!?」

「あぁ、相変わらずウゼー」

「アハハハ、まったくだ」

「リヒトもリレイも冷たいぃ〜! あ、ミーレお茶ありがとうね」

「いえ。それよりソニル様、従者の方が」

「あ? ああ、そうだった。前に紹介できなかったからさぁ。僕の従者でコニー。よろしくね」

「コニーと申します。アヴィー先生、お久しぶりです」

「コニー、元気そうね」

「はい。相変わらずです」

「ばーちゃん知ってんのか?」

「ハルちゃん、教え子よ。この年代の子達は皆教え子ね」

「ばーちゃん、しゅげー!」

「あら、そう? うふふ」

「こにーしゃん、かえれの村にも一緒に行った」

「そうですよ。ハルくん、よく覚えていますね」

「ハルちゃんお利口さんだぁ〜」


 またハルに抱きついている。そんな事をしていたら、そのうちまた威嚇パンチをされちゃうぞぅ。


「ハルくん、パンチしてもいいですよ」

「しょう?」

「はい。遠慮なく」

「嫌だよ! やめて!」


 ソニルの従者でコニー。ダークブルーブロンドでストレートの長髪をそのままおろしていて、ダークブルーの瞳のダークハイエルフだ。

 実はカエデの両親がいた村にも一緒に行っていたが最後まで紹介してもらえなかった。それをちょっと根に持っているらしい。


「ちゃんと今回は紹介したじゃん!」

「当然です」

「だからぁ、ごめんて言ったじゃん」


 ソニルが来て急に賑やかになった。


「ねえ、カエデちゃん。あれからまた村に行ったんだよ」

「え? そうなんですか?」

「そう。時々行くんだ。元気にしていらしたよ」

「ありがとうございます!」

「ふふ。カエデちゃんも可愛いね〜。何で僕の近くには可愛い子がいないんだろう?」

「ソニル様が可愛いからじゃないですか?」

「コニー、心にも無い事を言わないで」

「まあまあ、ソニル。落ち着け」

「はぁ〜い、長老」


 さて、やっと話ができそうだ。ルシカの手作りクッキーをつまみながら、ミーレとカエデが入れたお茶を飲んでいる。


「さっき説明したところまではいいか?」

「うん、長老。いいよ〜」

「でだ。どうやって探すかだ」

「あのね、僕思うんだけど。次はきっと4層だよね。だから待ち伏せしちゃえば?」


 ソニルがクッキーを摘んでいる手をプラプラさせながら提案する。ソニルが話すと緊迫感がまるでない。


「その話をしていたんだ」

「だが、ソニル。向こうがもう4層に入っていたらどうすんだ?」

「リヒト、おバカ?」

「やっぱりひとはおバカらったのか」

「ああ。相変わらずリヒトは鈍いな」

「何でだよ! ヒデーな!」

「だって、昨日僕達を探っていたんだよ。今日もう4層に入ってる訳ないじゃん。あ、でもあいつ瞬間移動出来るんだよね」

「ソニル、どうしてそれを知っているんだ?」

「だって長老、見えたから」

「ああ、ソニルは片目が常時鑑定だったか」

「そう。だからきっとまだ5層にいると思うよ」

「ソニル、そいつはどんな格好をしていた?」

「ん? えっとねぇ……黒いマントだったよ。あ、そうそう。片目と片腕がないんだ」

「ソニル様、本当ですか!?」

「え、イオス何? 常時鑑定で見えたから間違いないよ」

「長老、同じ人物に決まりッスよ」

「ああ、イオス。しかし、ソニル。何故、捕まえなかったんだ?」

「え、だって僕達が気付いたと分かったら直ぐに消えちゃったんだよ。瞬間移動したんだろうね」

「シアルとノルテに伝えておこう」


 長老がまたパーピを飛ばす。


「しかし、2000年は長いぞ」

「ね、リレイ。だよね。僕ならそんな長い時間、恨みを持ち続けるなんて無理だよ」

「それだけ酷い目にあわされたんだろう」

「そうだろうけどさぁ。絶滅する位なんだもんね」


 少しずつ明らかになってきた。ハイヒューマンの生き残りがいる事は間違いないだろう。

 しかし、2000年もの間一体どうしていたのだろうか? たった1人なのだろうか?

 単純に、ヒューマン族への恨みを晴らす為だけに、毒クラゲやアンデッドの騒ぎを起こしたのだろうか?


「とにかく、明日から行動だ。先ずは4層を目指す」

「長老、シアルとノルテは何て?」

「5層も回り終えたそうだ。手分けして4層の門を見張ってくれる」

「でも、入り口の門は4箇所じゃん。どうすんの?」

「ソニルが黒マントの男を見た方角に絞るそうだ」

「そっか。それしかないよね」

「それとだ、門を守る兵達に通達してもらえる事になった」

「ま、それでも早く4層に入るに越した事ないな」

「長老、ニークのとこへ行くのか?」

「気にもなるからな。取り敢えず、ニークの家に転移するさ」

「そうね。まだ4層は大丈夫でしょうけど、ニークの事は心配だわ」

「誰? ね、リヒト。ニークって誰なの?」

「アヴィー先生の愛弟子だよ」

「ああ、育ててたって子?」

「そうよ。ヒューマンの中ではニークが1番ポーションや薬湯を作れると思うわ」

「そりゃあ、アヴィー先生の愛弟子だもんね。ヒューマンが知らない事も教えてあるんでしょう?」

「そうよ。ガンガン教えたわ。ヒューマンの教え子の中では1番優秀じゃないかしら」

「ニークしゃんしゅげーんらな」

「あら、ハルちゃんの方が凄いわよ」

「しょう?」

「そりゃそうだ。ワシとリュミが教えたんだからな」

「げ……」

「ソニル何だよ?」

「だって、リヒトのお母さんのリュミ先生でしょ? 僕は付いていけないよ」

「リュミ先生もスパルタだからな」

「しょにりゅしゃんとりりぇいしゃんもかーしゃまを知ってんのか?」

「ああ、先生だ」

「ね、アヴィー先生の次に厳しい先生だよね」

「しょうか?」

「ハル、厳しいと思わないのか?」

「ん、教わりゅの楽しかったじょ」

「えー、信じらんないよー」

「アハハハ。ハルは優秀なんだよ」

「ふふん」

「ハルちゃん、可愛い!」


 はいはい。ソニルはハルが何をしても可愛いらしい。

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