第246話 アヴィー先生合流

「ばーちゃん!」

「ハルちゃん! 元気だった?」

「おりぇは元気らじょ。ばーちゃん、危ない事したりゃらめらからな!」

「ハルちゃん、そんな事しないわよ」

「らめら。ばーちゃんはおりぇとじーちゃんのそばにいりゅんらじょ」

「分かったわ。ハルちゃん」

「長老、リヒト、どんな感じだ?」

「おう、リレイ。すまんな」

「リレイ、ボチボチだな。墓地だけに」

「リヒト……お前面白くないぞ」

「うっせーな」


 リレイ・グリーエン。リレイはリヒトより少し歳上で、北西にあるベースの管理者だ。皆と同じアヴィー先生の教え子でもある。リヒトの祖父の妹の孫にあたる。ブルーゴールドの長い髪にブルーの瞳で、エルフらしい見た目の人物だ。

 リレイの従者であるアランも一緒だ。ダークブルーブロンドの長い髪にダークブルーの瞳のイケメンなダークハイエルフだが、人見知りであまり人前には出たくないらしい。なのに、討伐となるとリレイと2人で先頭を切ってガンガン攻める。


「アヴィー、先ずは墓地に魔石を探しに行くぞ」

「分かったわ。でも、よく見つけたわね。埋めてあったんでしょう? どうやって見つけたの?」

「こはりゅら」

「まあ! コハルちゃん凄いわね!」

「あら、ハルちゃん。あたしも忘れないで」

「しょうらった。しゅしゅが最初に気付いたんら」

「シュシュ、凄いじゃない! どうして気付いたの?」

「匂いよ」

「匂い? 魔石に匂いなんてあるの?」

「違うわよ。ずっと持っていたら匂いが移ったりするのよ。独特の匂いだから」

「そうなの?」

「そうなのよ。例の毒クラゲの匂いよ」

「え? どう言う事なの?」

「だからね、毒クラゲを持って来た奴が今回の魔石を埋めたのよ」

「そこまでする? 何がしたいのかしら?」

「アヴィー、そりゃあヒューマンが憎いんだろうよ」

「ヒューマンを? ヒューマンは色んなところで恨みを買っていそうだわ」

「な、そうやんな」

「カエデちゃん、あなたも元気だった? 大丈夫?」

「アヴィー先生、ありがとう! 自分も元気やで」

「そう。みんな元気そうで良かったわ」


 そんな話をしながら墓地へとやって来た。人がいないのを確認してコハルが亜空間から出てくる。


「コハルちゃん、大活躍ね!」

「アヴィー先生! 頑張るなのれす!」

「まあ、可愛い!」

「コハル、また魔石を探せるか?」

「任せるなのれす!」


 小さくなったシュシュも地面に下りて匂いを辿ろうとしている。


「駄目だわ。やっぱり小さいままだと全然分かんないわ」

「シュシュ、任せるなのれす!」


 コハルがフワフワと移動して行く。


「この墓地は広いな」


 今迄見てきた墓地の倍はあるだろうか。だが、作りは一緒だ。低い生垣で囲まれた中に整然と墓石が並んでいる。四方には木が植えてあり簡易的な水場がある。よく整備されている。


「長老、隣り町と合同の墓地とちゃうかな?」

「カエデ、そうなのか?」

「うん。小さな町やと隣り町と合同で管理してると思うで。6層はまだ1つの町が広いけど、5層4層になったら領地も狭くなるからな。合同墓地の方が多い筈やわ」

「かえれ、詳しいな」

「そらハルちゃん、自分はこの国に住んでたからな」


 まあ、確かにそうだ。奴隷だったとはいえ、カエデはアンスティノスに5年住んでいた。街の事情位は知っていてもおかしくは無い。


「あっちなのれす!」


 コハルが墓地の隅を目指して移動して行く。


「ここなのれす!」

「掘ります」


 コハルが指定した場所をイオスが土属性魔法で掘り返す。と、コロンと出て来た。真っ黒な魔石だ。


「これね……」

「マジ、こんな魔石なのか」

「アヴィー、リレイ、触るんじゃないぞ」

「長老、分かっているわ」

「ああ。スゲー闇の魔力を感じるな」


 アヴィー先生が肩から下げた鞄からトングの様な物を取り出した。それで魔石を挟んで持ち上げて見ている。


「長老、神眼でも見てちょうだい。これだけ込められていると見える筈だわ」

「そうか?」


 長老の瞳がゴールドに光った。神眼で見ているんだ。


「分かるかしら?」

「まさか……いや、そんな……」

「やっぱりそうなのね。あれだけ探したのにね」

「ああ。それしかないな」

「じーちゃん、ばーちゃん。こりぇエルフの魔力じゃねーな」

「ハルも見えたのか?」

「ん、エルフが使う精霊魔法じゃねー事らけ分かりゅ」

「スゲーな。俺は全然見えないぞ」

「いや、見えなくても魔力がエルフとは全然違うだろう」

「え……リレイ分かるのか?」

「リヒトは分からないのか? まだまだだな」

「じーちゃんの神眼ならもっと詳しく分かりゅんらろ?」

「まあ、そうなんだが……」


 長老とアヴィー先生はもう分かった様だ。だが、何故か戸惑っている。どうしたんだ?


「長老、もう浄化してもいいかしら?」

「ああ」

「ピュリフィケーション」


 アヴィー先生が魔石を浄化した。そして……


「大切な話があるわ。イオス、何処か宿を取ってくれない?」

「分かりました! 少しお待ち下さい」

「イオス兄さん、自分も行くわ」

「おう」


 イオスとカエデが街の中心部へと走って行く。


「長老、アヴィー先生?」

「リヒト、外では話せんな」

「そうか……」

「じーちゃん、ばーちゃん……おりぇ……」

「ああ、ハル。大丈夫だ」

「そうよ。ハルちゃんには関係ない事だわ」

「しょうか?」

「ああ、そうだ」

「まさか……」

「ルシカ、宿に入ってからだ。外だとどこに耳があるか分からんからな」

「はい、分かりました」


 直ぐにイオスとカエデが戻ってきた。


「宿を取りました! 行きましょう!」


 イオスとカエデが先導して皆は宿へと急ぐ。ハルとルシカはもう薄々気が付いている様だ。


「可哀想だとは思うけど……心の持ち様だわ」


 珍しくシュシュが真面目な事を言う。シュシュは確信を持っている。


「こはりゅ、亜空間に入りゅんら」

「はいなのれす」


 空気が重い。皆も余計な事を言わずに黙って移動している。なのに……


「え? どした? なんだ?」


 リヒト、君は分かっていないんだね。頑張ってくれ。君はヒーロー枠なんだぞぅ。

 アヴィー先生が合流して一気に話が進んだ。


「ここです。俺は馬を止めてきます。カエデ、ミーレを手伝え。ルシカ頼む」

「はいにゃ」

「分かりましたよ」


 宿はその街でも1番高級だろうと思われる宿だった。落ち着いて話せる様にとイオスが気を回したのだろう。

 宿に入ると、ミーレがお茶を用意する。

 

「ハル、何にする?」

「おりぇは果実水がいい。りゅしかのクッキーもら」

「はいはい」

「ミーレ姉さん、自分が出すわ」

「ええ、お願いね」


 相変わらず空気は重いが、カエデは理解しているのだろうか? リレイは? ミーレは? イオスは? どうなのだろう。

 皆にお茶を出し、イオスが戻るのを待つ。とにかく、皆が揃ってからだ。

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