第201話 フィーリス殿下5th

「ハルー! 待っていたのだぞぅ!」


 お馴染み、フィーリス第2皇子殿下だ。

 一行は報告に登城していた。長老とリヒトが皇帝陛下に報告をしている間、ハル達は終わるのを待つ為別室へと移動していた。それを、フィーリス殿下が待ち構えていた。

 そしてまたハルを抱き上げクルクルと回る。懲りないな。


「とぉ!」


 はい、お決まりです。ハルの威嚇パンチが決まりました。まあ、ハルも本気ではない。てか、フィーリス殿下、学習しよう。もう何度目だ?


「痛いんだぞぉ!」

「アハハハ! ふぃーれんか! 遊ぼう!」

「おう! 遊ぶのだそぅ!」


 そしてまた、フィーリス殿下に抱き上げられ奪取されるハル。こんな時のフィーリス殿下は超素速い。


「フィーリス殿下! ハル!」


 イオスとカエデ、ミーレが慌てて後を追う。


「アハハハ! 速いのだそぉ!」

「しゅしゅ! すぴーろあっぷら!」

「速いなのれす!」

「しっかり捕まってよ〜!」


 シュシュがスピードをあげた。

 何をしているのか……説明しよう。ハルとフィーリス殿下がシュシュに乗って城の中庭を爆走しているのだ。何故かコハルも一緒に、1番前でちょこんと乗っている。

 もちろん、爆走と言ってもたいしたスピードは出していない。城の中庭だから、そうスピードは出せない。


「あー、またルシカに見つかったら叱られるぞ」

「お決まりだわね」

「いいなぁ、自分も乗ってみたいわ。けど、虎やからなぁ」

「何、カエデ。まだシュシュが苦手なの?」

「シュシュは苦手じゃないけど、虎が苦手なんや」


 カエデ、シュシュも一応虎だ。しかも、聖獣だ。


「フィーリス! ハル! またお前達は!」

「ハル! シュシュ!」


 ああ、レオーギル第1皇子殿下とルシカだ。2人に見つかってしまった。


「おぉ、兄上とルシカが来てしまったのだぞぅ」

「あの2人はやばいじょ」

「駄目ね、戻りましょう」

「戻るなのれす」


 シュシュが素直に2人の元へと戻ってきた。レオーギル殿下とルシカが仁王立ちをしているぞ。


「フィーリス、ハル、何度言ったら分かるのかな!?」

「危ないと何度も言っていますよね?」

「分かっているのだぞぅ」

「ごめんしゃい」


 フィーリス殿下とハルは2人して小さくなっている。いつの間にかコハルはもういない。亜空間へと入ったらしい。逃げ足が早い。


「長老のお話が終わりましたよ。おやつにしましょう」

「おー、ルシカのおやつは美味なのだそぅ!」

「やっちゃ! りゅしかのおやちゅら!」

「おやつなのれす!」


 あらら、コハル。叱られている時はいなかったのに、おやつと聞いてまた出てきている。抜け目がない。


 皆で部屋に入ると長老が待っていた。イオスにハル用の椅子に座らせてもらいスタンバイだ。


「ハル、またルシカに叱られていたのか?」

「じーちゃん、りゅしかは心配性なんら」

「そうよ。あたしがハルちゃんを落とす訳ないのにね」

「ん」

「でも、シュシュは速いなのれす」

「コハル先輩! 余計な事言わないで!」

「アハハハ! また爆走していたのだろう」

「ちょぉっとスピードアップしただけよぅ。ね、ハルちゃん」

「ん、平気ら」

「平気なのだぞぅ」

「さ、おやつですよ」

「りゅしか! りょーりゅけーき!」

「はい。生クリームたっぷりです。マロンも入ってますよ」

「おお! すぺしゃりゅら!」

「ハル、スペシャルなのか?」

「ん、いちゅもは生クリームらけら」

「おお! それはスペシャルなのだぞぅ!」

「ルシカ、あたしもちょうだい! 大きいのがいいわ!」

「シュシュは食べすぎなのれす!」

「だってコハル先輩、あたし一口が大きいからぁ」

「んまい! りゅしかてんしゃい!」

「アハハハ。ハル、ありがとう」

「美味いなぁ。ルシカはプロだな」

 

 レオーギル殿下もご満悦だ。


「殿下、ありがとうございます」

「じーちゃん、もう帰っていいのか?」

「ああ、もう報告は終わったからな。じーちゃんも一緒に帰ろう」

「しょっか。お泊まりれきりゅか?」

「おう、一緒に風呂も入ろうな」

「やっちゃ! りひと、今日はじーちゃんも一緒に風呂ら!」

「おう」

「ありぇ? りひと、おちゅかりぇか?」

「いや、気にすんな」

「しょうか?」

「ああ」


 リヒトはまだ引きずっているみたいだ。余程、驚いたのだろう。


「ハッハッハ! リヒトは小心者だな!」

「いや、あれが平気な方がおかしいって」

「そうか? ワシは平気だぞ」

「さすが、アヴィー先生の旦那だよ」

「アヴィーと比べてもらっては困るなぁ。あれは無鉄砲すぎる」

「長老も似た様なもんだよ」

「え、じーちゃんしょうなのか?」

「何を言うか。じーちゃんは普通だぞ」

「ん、しょうらな」

「いや、ハル。違うから」


 リヒトとルシカだけが、首を横に振って否定している。



「おら、シュシュ洗うぞ!」

「やだって! だからあたしはクリーンで充分なんだって!」

「シュシュ、ここまできて何ですか!」

「アハハハ! なんだ、シュシュは風呂が嫌なのか?」

「違うのよ、長老! この2人が! ルシカとイオスがぁ! ああぁぁぁ!」


 ――ザパーン!


 そうです。シュテラリール家の露天風呂に皆で入っています。またシュシュはイオスとルシカに洗われている。


「ぶふッ! だからぁ!」


 ――ザパーン!


「言って! お願いだからお湯かけるって先に言ってちょうだい!」

「ほらシュシュ。真っ黒じゃねーか!」

「シュシュ、手を上げてください」

「もう、何なの!?」

「しゅしゅ、洗ってもりゃうの気持ちいいらろ?」


 ハルちゃんは、ちょこーんと座ってリヒトに髪を洗って貰っている。頭が泡でモコモコだ。シャンプーハットがあれば良いのにね。


「ハルちゃん! やだ、超可愛い!」

「おら! 尻尾あげるぞ!」

「やだ! そんな恥ずかしいところ洗わないで! あたしの純潔がぁぁぁ!」

「流しますよ」


 ――ザパーン!


「ぶふッ! ルシカ! 頭からかけるのやめて!」

「おし、ハルいいぞ」

「りひと、交代ら」

「おう」

「ハル、じーちゃんも背中洗ってくれ」

「おう、じーちゃん」

「あら、長老。綺麗な腹筋してるじゃない! 細マッチョなのね!」

「シュシュもいい筋肉だ。最初は肋骨が分かる位だったのにな」

「そうでしょう。あたしのナイスバディーがねぇ……」


 ――ザパーン!


「ブヘェッッ! イオス!」

「あぁ!? まだ泡があんだよ」


 イオスとルシカの2人掛かりで洗われたシュシュ。


「シュシュ、綺麗になったじゃねーか」

「そぉ? 魅惑のボディーになったかしら?」

「じーちゃん、洗うじょ」

「おう、ハル。頼む」


 こうして、皆で入る風呂は楽しい&気持ちいい。平和な証拠だ。

 しばらくゆっくりできるといいのだが。

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